オダギリジョー(36)が映画「舟を編む」(石井裕也監督、来年4月13日公開)に出演することが17日、分かった。知性と軽さを併せ持つ難役をこなせる演技力を買われ、起用された。主演した4月クールのフジテレビ系連続ドラマ「家族のうた」は低視聴率に苦しんだが、俳優としての高い評価は不変だった。期待に応えるべく、真摯(しんし)に役に取り組んでいる。

 「舟を編む」は、今年の「本屋大賞」で第1位を獲得した、作家三浦しをん氏の同名小説の映画化。出版社を舞台に、辞書作りに奮闘する編集部員たちの姿を描く。オダギリは、主人公(松田龍平)に影響を与える先輩編集者を演じる。原作の設定通りのチャラ男だが、映画では、思いやりのある男としても描かれてゆく。

 孫家邦プロデューサーは「映画のキーになる役。重厚さと軽さも必要で、それなりの知性がないと成立しない難しい役」という。オダギリについて「周りの世界を壊さず、引き立てることもできる。本当にうまく、すごい俳優」と全幅の信頼を置いた上で起用したという。

 松田とは初共演となる。真面目な主人公に「頭でっかちでは良い辞書を作れない」と身を持って教えるなど、男同士の友情も見どころの1つ。オダギリは「いつか一緒にやりたいと思っていたので、うれしかったですね。一緒にスポーツの話で盛り上がったりした。無口で寡黙なイメージがあったけど意外でした」。撮影は先月下旬に開始。役柄同様、絆を強固なものにしつつあるようだ。

 4月から放送された主演ドラマ「家族のうた」(日曜9時)は、平均視聴率3・9%と大苦戦して打ち切りになるなど、予期せぬ形で注目を集めた。「結局モノを作るって、すべて受け入れられるとは思ってないですから。もちろん成功するものもあれば、失敗するものもある。ただ失敗した原因は自分にもあるかも知れないから、そこは真摯に受け止めないといけないとは思います」。

 同ドラマではミュージシャンの設定だった。久々に楽器に触れ、楽曲制作を再開したという。「また何かやりたくなって、音楽を作っています。(出来は)そっちの方がひどいと思うんですけど」と笑った。

 ◆映画「舟を編む」

 玄武書房営業部勤務の馬締(松田)は変人として持て余されていたが、人と違う視点で言葉を捉える才能を買われ、新辞書「大渡海」を編む仲間として辞書編集部に迎えられる。定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生をささげる老学者、辞書に愛情を持ち始めるチャラ男(オダギリ)、運命の女性(宮崎あおい)ら個性的な面々に出会いながら、馬締は辞書の世界に没頭していく。