世界3大映画祭の1つカンヌ国際映画祭(5月15~26日)の、コンペティション部門のラインアップが18日、発表された。日本からは歌手で俳優の福山雅治(44)主演の「そして父になる」(是枝裕和監督、10月5日公開)と、俳優大沢たかお(45)女優松嶋菜々子(39)が共演した「藁の楯」(三池崇史監督、26日公開)の出品が決まった。1997年(平9)の「うなぎ」(今村昌平監督)以来16年ぶりの邦画による最高賞「パルムドール」獲得に期待がかかる。

 日本でトップクラスの人気を誇る俳優陣が出演する対照的な2作品が、同時にカンヌコンペ部門に出品された。福山が初めて父親役を演じる「そして父になる」は家族の絆を問う感動作。「藁の楯」は大沢と松嶋が殺人事件の容疑者を護送するSPを演じるエンターテインメント作だ。

 「そして-」は、映画祭の番組選定委員から「登場人物たちの心の動きの描写がとても日本的で繊細で非常に共感できる」と評価を受けた。是枝監督のコンペ部門出品は、「誰も知らない」以来9年ぶり3回目。一方、「藁の楯」は、欧米の映画関係者の間でも「芸術性を重視するカンヌ国際映画祭で、こうした作品の出品は異例」との声が上がっているが、三池監督は「一命」以来2年ぶり2回目の同部門出品となる。

 また、「そして-」の福山は、俳優として自身の出演作品が国際映画祭に出品されるのは初めてで、感激もひとしおだ。

 福山

 今回のお話は聞けば聞くほどすごいこと過ぎまして。情けないことに、自分という人間はキャパシティーを超えたことが起こると、逆にピンとこないものなんだなと妙な実感をしております(笑い)。とはいえ、心からうれしく光栄に思っております。

 フジテレビ系ドラマ「ガリレオ」(月曜午後9時)の収録中で同映画祭の期間中も続くが、「俳優人生においてこんな大舞台に行ける機会は2度とないかもしれない、という思いで何とか調整して晴れの舞台に立ってみたいです」とカンヌ行きに強い意欲を見せた。

 大沢も、尊敬する米国のスティーブン・スピルバーグ監督が映画祭の審査委員長を務める同映画祭への出品に興奮を隠せない。

 大沢

 この映画に携わったすべてのスタッフとキャストを代表して映画祭に参加したいです。「藁の楯」を多くの海外の方に見ていただけるのはとても楽しみですし、僕にとって神のよう存在のスティーブン・スピルバーグが自分の出演する映画を見るなんて感慨深いものがあります。

 2作同時のコンペ部門出品は、是枝監督の「誰も知らない」と押井守監督のアニメ映画「イノセンス」が出品された04年以来9年ぶり。福山、大沢、松嶋と日本のドラマでは確実に高視聴率を稼ぐ役者たちが、どう評価されるかも含め、例年以上に注目度の高い「祭」になりそうだ。

 ◆「そして父になる」

 良多(福山)は学歴、仕事、家庭のすべてを手に入れ、自分は人生の勝ち組だと信じて疑わなかった。そんなある日、病院からの連絡で、6年間育てた息子が病院内で取り違えられた他人の夫婦の子供だったと判明する。血か、愛した時間か…。厳しい現実を突きつけられた良多は思い悩み、葛藤する。

 ◆「藁の楯」

 財界の大物・蜷川(山崎努)の孫娘が惨殺され、8年前の少女暴行事件で逮捕され、出所したばかりの清丸国秀(藤原竜也)が指名手配された。清丸は行方をくらましたが、自分を殺したら謝礼10億円を払うという広告を蜷川が大手全国紙に出したため自首。その清丸を九州から東京の警視庁に移送するため、銘苅(大沢)と白岩(松嶋)ら5人のSPが警護役として派遣された。