日本を代表するアニメーション作家宮崎駿監督(72)の長編映画製作からの引退発表を受け、世界各国から驚きと引退を惜しむ声が続出した。欧米では「日本のウォルト・ディズニー」「アニメ界で最も成功した監督」などの賛辞が贈られた。国内では、最後の作品とされる「風立ちぬ」の観客動員が伸びた。2日現在の興行収入(興収)は約88億4800万円と100億円突破も見えてきた。

 イタリア・ベネチア映画祭の公式会見中に電撃発表された宮崎監督引退のニュースは、全世界を一気に駆けめぐった。ロイター通信は「日本のウォルト・ディズニー」と絶賛。AP通信も「アニメ界で最も成功した監督」と絶賛した。

 一方、アジア各国は引退の要因を予想、分析した。韓国聯合ニュースは、同監督が憲法や福島第1原発問題などへ政治的な発言をしたとして「発言が呼んだ波紋に負担を感じたのでは」と報じ、MBCテレビも「安倍政権の右翼化政策が、加速化したことに失望を覚えたのでは」と指摘した。また中国共産党機関誌・人民日報系の環球時報は、太平洋戦争時が舞台の「風立ちぬ」にナショナリズムへの警戒が込められており「日本の右翼の攻撃に遭っている」と紹介した。

 さまざまな評価や臆測がなされる中、同映画祭の開催地、イタリアでは好意的な評論が相次いだ。全国紙ラ・スタンパは、宮崎監督を「アニメのパパ」と評し、「風立ちぬ」について「一部で軍国主義寄りなどと批判されたが、宮崎の映画を知っている人なら彼が平和主義なのは疑いの余地はない。『千と千尋の神隠し』が米アカデミー賞でオスカーを受賞した時は、米国がイラク攻撃をしたことへの抗議で出席しなかった」と報じた。ANSA通信は「現代的なアニメで人々を感動させ、驚かせてきた天才」とたたえた。

 また、全国紙コリエレ・デラ・セラは「風立ちぬ」について「彼が、アイデアと歴史、戦争を並行して描いた今作品は大人向けだが、これまでの作品と同じ。主人公が作った飛行機(ゼロ戦)には愛がこもっており、故国日本と同じようにボロボロになった。ナショナリズムなどと批判する人は何も見えていない」と伝えた。そして「審査員たちは、このこと(引退)に無関心でいられるだろうか」と、アニメ史上初となるベネチア映画祭での最高賞・金獅子賞受賞を期待した。