吉永小百合(69)が初めて企画・プロデュースした主演映画「ふしぎな岬の物語」(成島出監督、10月11日公開)の撮影がこのほど千葉県南房総市和田町で行われた。吉永は原作「虹の岬の喫茶店」(幻冬舎)にはないエピソードを加えるなどプロデューサーとしての手腕も発揮している。

 原作は千葉県の鋸南町に実在する喫茶店を中心に繰り広げられる人間模様が描かれている。吉永は同県内で撮影地探しをする中、伝統の鯨漁を取り入れたいと考えた。「今もしていると聞いた。懐かしいもの、古いものへのノスタルジーを出したい」。鯨祭りは実在しないが、鯨漁師が鯨への供養や感謝を込めて作った鋸南町に伝わる鯨唄と、同町の「クジラの都まつり」を参考にして吉永と成島監督らで考えた。現在、鯨漁の基地があり、年間26頭の漁獲が認められた和田町での撮影にこぎ着けた。

 2月1日のクランクイン後、大雪の影響で撮影が遅れた。主演女優として翌朝の撮影に備え、現場を早く離れた時は「プロデューサーとしては最後までいなきゃいけない。結構悩みます」と葛藤もあった。産みの苦しみを乗り越え、撮影は3分の2まで進んだ。「ここにいると小さい頃を思い出す」。描きたい原風景を自らの発案もあってフィルムに刻み込んだ充実感が笑みからあふれた。

 取材陣を前に漁師役の笹野高史が歌い出した。

 こんど突いたも

 ヤレ

 岬組よ

 ナアエンヤ

 大漁旗

 立て

 港入り

 吉永が両手で拍子を取りながらこれに応じると、共演の阿部寛、竹内結子も続いて歌い出した。結束力の強さを感じさせた。撮影は今月末に終了する。【村上幸将】