作曲家平尾昌晃さん(享年79)の総額60億円ともいわれる遺産の相続問題で、三男の歌手平尾勇気(37)が、平尾昌晃音楽事務所社長を務める平尾さんの妻の「取締役の職務執行停止」を求めた仮処分申請が、東京地裁に却下されたことが15日、分かった。

この日までに、原告と被告の双方に地裁判決が届いた。

関係者によると、勇気は高裁に抗告する方針。今月下旬に都内で記者会見を行う予定だという。

17年に死去した平尾さんの相続問題が表面化したのは昨年9月。平尾さんの残した会社2社の社長に就任した妻に対し、「就任の経緯に問題があった」「妻が遺産を不法に独占している」などと主張した勇気が、職務執行停止を求める仮処分を東京地裁に申請して受理された。

会見後に行われた株主総会で、音楽出版管理会社については、事実上、妻が社長の職を解かれて申し立ては取り下げられた。平尾さんの個人事務所「平尾昌晃音楽事務所」については「株主確定がされていない」として、妻が社長にとどまっていた。

妻はこれまでに「平尾昌晃は争いごとを好まなかった人だったので、このようなことになって残念なことだと思っています」などと文書でコメントしている。

◆争いの経緯 17年7月に急死した平尾さんに遺書はなく、音楽事務所には使途不明金があったとされる。生前の平尾さんにとって、会社は「個人商店」の意味合いが強く、正式な株主総会などの手続きはなく、話し合いによって物事を決めてきた経緯がある。遺産は60億円ともいわれる高額なため、平尾さんの死後に2社の社長に就任した妻について、勇気が「遺産を不法に独占している」などと不信感を表明。昨年9月、職務停止の仮処分申請を東京地裁に申請したことが騒動の発端になっている。