日本卓球界に、また1つ新たな歴史が刻まれた。日本が男子団体準決勝でドイツに3-1で勝って決勝進出し、この種目で初のメダルとなる「銀」以上が確定。エースの水谷隼(27=ビーコン・ラボ)は、シングルスの銅メダルに続き、初の個人と団体のダブルメダリストとなった。17日(日本時間18日午前7時半開始)の決勝では、3連覇を狙う中国と対戦する。

 水谷が男子卓球界の改革者となった。2-1で迎えた第4試合。エースが決めた。スポーツの優位性を高めるために両親が0歳から左利きに矯正した左腕。「最後は最高のプレーで決めたかった。最後の1本は映像にも結構なりますから」。6連続スマッシュで決めると、代名詞となったガッツポーズと雄たけび。倒れ込んで喜びを表現した。

 相手を威嚇するほどの気迫のガッツポーズに、日本では、相手への敬意を欠くとして「喝!」の声も上がる。「僕は命を懸けてここに来ていますから。遊びじゃないし、戦場ですから」。勝負への覚悟に加え、水谷流の理由ももう1つあった。

 それは、イメージの変革。「卓球と言えば日本人の先入観で選手が根暗とかダサイとか…。活躍することでプレーを取り上げてもらえるので、払拭(ふっしょく)したい。ポジティブな格好いいとかになれば卓球人口も増えますし、プロになりたいと思ってくれる人もいる」。自己分析では「血を見ると燃える性格」。エンターテインメント力は、大好きなプロレスからも学ぶ。「卓球選手で年間1億稼ぐのは夢じゃない。貯金は今も億あります」。夢ある存在を示した。

 「卓球=愛ちゃん」。福原愛を始め、石川佳純や「みうみま」として最年少記録を更新してきた伊藤美誠(みま)や平野美宇がクローズアップされ、女子のイメージも強かった。前夜には女子団体準決勝で日本がドイツに負けた試合を選手村で観戦。「女子の分まで、やってやるんだ」と一致団結。一方で女子偏重の盛り上がりに反骨心もあった。15年のプロツアーグランドファイナルで男女そろって個人世界一の称号を得ても、スポットライトは石川ばかり。「男子もいつか見返してやるんだ。それも力になった」。意地も原動力だ。

 2勝しなければ日本の勝利なし。その決意で臨んだ団体。国際大会過去1勝15敗だったボルにも勝った。北京五輪、モスクワ、ドルトムント、東京の世界選手権で負けたドイツにリベンジも果たした。「最近、相手は水谷隼を恐れているのを試合で感じる」と自信も力にする。シングルス銅に続く団体メダルの価値は高い。「団体ではみんなの夢もかなえたかった。リオから東京につながる大きなメダル。中国の1番手のライバルにならないといけない」。次の改革は王者中国斬りだ。【鎌田直秀】