Jリーグ開幕まで、あと少し。3季ぶりにJ1に復帰する磐田の魅力の1つに「フェアプレー」を挙げたいと思います。

 今年、16日間にわたって行われた鹿児島キャンプ。その中で行われた練習試合で、後半40分過ぎに相手選手を削り、2枚目の警告を受けて退場になった磐田の選手がいました。0-0の拮抗(きっこう)した試合だったこともあり、熱くなった選手はふてくされた態度でベンチへ。しかし、名波浩監督(43)は、強い口調で「謝ってこい!」と諭しました。

 名波監督は常々、「低俗な試合をするな」と選手に伝えています。昨年8月29日の天皇杯1回戦、北陸大戦(1-0)では、倒れた相手に手を差し伸べたり、ファウルをした相手に謝る磐田の選手の姿がありました。北陸大の西川周吾監督から「磐田の選手たちの姿は、プロ選手としてすばらしかった」と言われ、名波監督が「チームの選手についてそう言ってもらえるのが、一番うれしい」と、喜んでいたのが印象的でした。

 大学生チームを相手にした練習試合では試合後、相手選手と交流する姿もよく見られます。DF桜内渚(26)は、知り合いのスタッフや選手に頼まれてスパイクを渡していました。「意図していなくてもファウルをしてしまうことはある。倒れていたら手を差し伸べるし、足をつった選手がいたら助ける。そこにプロもアマも関係ない。人として当たり前のこと」。Jリーグでの試合でも、冷静な対応が多い桜内は「サッカーも人と人の関わり。今は敵でも、何年か後に仲間になるかもしれない」と言います。サッカーをしている人は、全員が仲間だと思っているそうです。

 名波監督は、相手を敬えない選手や態度を「論外だ」と厳しく批判します。その理由は、選手の成長をうながすため。相手を敬い、熱くなる試合中も冷静さを欠かさないことが、選手の精神面を強くする要因になると言います。就任3年目。チームにも“名波イズム”はしっかり浸透しています。J1の舞台での磐田イレブンの振る舞いに、ぜひ注目してください。


 ◆保坂恭子(ほさか・のりこ)1987年(昭62)6月23日、山梨県生まれ、埼玉県育ち。10年入社。サッカーや五輪スポーツ取材を経て、昨年5月から静岡支局に異動し磐田担当に。鹿児島キャンプ中に人生初の肺炎になり、まさかの途中離脱。今年の目標は「健康第一」です。