<アジア杯予選:日本2-1イエメン>◇20日◇1次リーグ◇A組◇熊本KKウイング
日本代表FW田中達也(26=浦和)が、09年初戦で一発回答の決勝弾を決めた。前半7分、鋭い突破からの好クロスでFW岡崎慎司(22)の先制点をアシスト。1-1に追いつかれた後の後半21分には、低空ヘッドで決勝点を押し込み、2-1の勝利をけん引した。「エース候補」と期待されながら、05年の右足首脱臼骨折以降、故障に泣いてきたが、MLBマリナーズのイチローらが導入するスパイクのインソールで足首の負担を軽減して今年は年頭から絶好調。W杯最終予選が控える勝負イヤーに、幸先良いスタートを切った。
気温10度の寒空に震えるスタンドを、田中が熱気の渦に変えた。前半7分、中村憲からのパスを受けるとトップスピードに乗った。キレあるドリブル突破でぺナルティーエリアに突き進んだ。敵DF2人をかわしながら右足で低空パス。先制した岡崎は右足をワンタッチで合わせるだけでよかったドンピシャのアシスト。背番号9を付けた小さなエースが、格下のイエメンを威圧するゴールを演出した。
同点に追いつかれた悪い流れも自らの一撃で断ち切った。後半21分、中村憲の右CKをニアにいた岡崎がヘッドで流したボールの目前に絶妙なポジションニング。低空ヘッドで確実に押し込み、決勝点を挙げた。日本は27本のシュートで2得点だが、田中自身は3本で1得点。1アシストに加え、前線からの守備でも勝利に貢献した。欧州組、常連のJ選手が不在で控え中心のメンバー構成の中で、格の違いを見せつけた。
1月からプレーできる自分自身がうれしかった。05年10月に右足首を脱臼骨折後、常に年頭はリハビリが続いた。3年間はシーズンを通じて戦えなかった。08年オフに欧州移籍を希望。欧州の代理人からはポテンシャルを高く評価されながら、故障なくシーズンを戦えていないことが理由で欧州クラブからの正式オファーは見送られた。だが09年からは復活の確かな手応えがある。
右足首を中心に両足に負担をかけないため、スパイクに特別なインソール(中敷き)を導入した。神奈川県内のインソール職人のもとに足を運び、足型を取った。故障の少ないMLBマリナーズのイチローが採用しているスペシャル版をスパイクに装着してから、故障続きの苦境から脱却を図ることができた。
09年は2月のオーストラリア戦を皮切りに6月まで岡田ジャパンにとって大事なW杯最終予選を控える。田中は「岡田さんのやりたいサッカーをやれば勝てるし。コンディションはまだまだ上がる。そこを一番、強化していきたい」と意気込んだ。現在の岡田ジャパンのFW陣は玉田、大久保が軸となっているが、まだ絶対的なエースの領域には到達していない。シーズンを通じて戦う肉体さえあれば、田中は誰にも負けない自負がある。
「チャンスをつくって、もっと(ゴールを)決めていかないといけないと思います」と1ゴール1アシストをマークしても満足感はない。日本のエース候補と呼ばれてきたワンダーボーイが09年初戦で大黒柱への変ぼうを予感させた。【藤中栄二】


