【ブリスベーン(オーストラリア)11日=盧載鎭、益子浩一、保坂恭子】日本代表FW香川真司(23=ドルトムント)が、W杯ブラジル大会アジア最終予選第3戦のオーストラリアとの重要な試合を、2-0快勝と予告した。11日、試合会場での前日練習前、ドルトムントのチームメートでオーストラリア代表GKランゲラク(23)と再会し、「2-0で勝つよ」と笑顔で堂々の勝利宣言をしてのけた。ちょうど6年前の同じ日、W杯ドイツ大会でオーストラリアに思い知らされた屈辱を、香川が晴らし、最終予選無傷の3連戦へと突き進む。

 小雨が降る肌寒いスタジアムで、ネックウオーマーから23歳の笑顔がのぞいた。真剣な表情でアップをしている最中、チームスタッフに連れられてピッチを小走りで離れた。けげんな表情で向かった先、ピッチへの出入り口に、GKランゲラクが待っていた。同い年のチームメートと再会すると、途端に笑顔がはじけた。

 日本人とオーストラリア人の会話はドイツ語、英語、さらに日本語も交ざって進んでいった。身ぶり手ぶりを入れながら、会話は弾んだ。ランゲラクから「調子はどうだ?」と問いを投げかけられると、人さし指と中指の2本をおもむろに差し出し、挑発するように繰り返した。

 香川

 ツー、ゼロ、ツー、ゼロ。

 「2-0で勝つよ」。大親友へ、不敵に2度繰り返す。そして、反応を楽しむように192センチの友人を見上げた。ランゲラクから思い切り背中をたたかれても笑顔でかわし、余裕の表情。最後にはお互い両手で固い握手を交わし「チャオ」。イタリア語で別れのあいさつ。くるりと背を向け、ピッチに戻る瞬間には、日本代表の顔に戻っていた。

 ランゲラクは、遠征先のホテルでいつも同室になる。同い年のルームメートとの決戦前の再会に、「うれしいことですね」と話した。

 その笑顔の裏には、大きな悔しさが秘められていた。11年1月29日のアジア杯オーストラリア戦。決勝のピッチに香川の姿はなかった。準決勝の韓国戦で、右足第5中足骨を骨折し、チームを離脱。チームは延長の末、1-0で優勝をもぎ取った。その歓喜の輪に香川は入れなかった。「アジア杯はもう振り返らない。別の大会だし、しっかり切り替えている。最終予選の試合として臨む」。その言葉に、この試合にかける強い思いが込められていた。

 昔の自分を、見返すチャンスでもある。さかのぼることぴったり6年。06年の6月12日。日本はW杯ドイツ大会1次リーグ初戦のオーストラリア戦を戦った。当時、背番号10をつけていたMF中村俊のゴールで先制するが後半に3失点し、逆転負けした。

 その時の香川は、FCみやぎバルセロナからC大阪入りした1年目。リーグ戦出場はおろか、ベンチ入りが2試合だけ。Jリーグデビューすらできなかった。

 その後、Jリーグで活躍し、世界へ羽ばたいた。今は、背番号10をつける立場になった。「アウェーでの挑戦になるので、ためされるゲーム。どこまでできるのか、楽しみ」。

 W杯を見るだけだった過去から、自分の力でW杯への道を切り開ける立場にまで上ってきた。目線の先には、勝利しかない。