J2山形はホームで札幌と1-1で引き分け、クラブワースト記録に並ぶ開幕8戦未勝利となった。前半11分に初先発のMF汰木(ゆるき)康也(20)がリーグ初得点を決め先制。しかし前半37分に雷雨のため一時中断(約45分間)するハプニングにも見舞われ、後半14分に追いつかれてしまった。熊本地震による中止試合もあって、最下位を脱出。連敗も止まったが未勝利のトンネルは抜けられなかった。

 開幕8戦未勝利に終わったが、光は差した。前半11分、MF伊東が上げた右クロスのこぼれ球を、駆け上がったMF汰木が右足で押し込んで理想的な形で先制した。石崎信弘監督(58)は「新システムで新メンバーが入り、前半はうまく対応できていた。汰木と伊東は特長が出ていた。特に汰木は彼の良さであるドリブルで、突っかけていけた」と、今季初先発で抜てきした両サイドハーフを絶賛。従来の3バックから、ぶっつけ本番で導入した4バックのシステム4-2-3-1が結果的に功を奏した。

 3バックよりも前線に人数をかけるため、間延びしていた中盤が引き締まった。MF松岡は「両サイドが生き生きしてた。攻撃が活性化したから、ポゼッションで相手を押し込められた」と手応えをつかんでいた。その分、枚数が1枚減る守備陣も1失点で粘った。DF渡辺は「前半は守備がはまり、思ったよりも良かった。攻守ともに連係できている」と振り返った。

 勝ち点3こそ奪えなかったものの、浮上のきっかけをつかんだ。DF宇佐美の出場停止など、窮地からひねりだした苦肉の策で、中止に終わった金沢を抜いて暫定で最下位を脱出した。次節23日の敵地岡山戦について石崎監督は「4バックは対札幌に対して組んだ。出場停止の選手も帰ってくるし、次の岡山に対して分析して対応できれば。どっちで行くかは秘密」とニヤリ。勝負師のタクトはまだまださび付いていない。【高橋洋平】