仙台レディース(L)がホームで劣勢をはね返し、INAC神戸から価値ある勝ち点1を手にした。前半10分にオウンゴールで先制点を献上。ハーフタイムには、千葉泰伸監督(45)が弱気になった選手たちを怒鳴り散らし、後半は一変した。同32分から出場したFW浜田遥(23)が、5分後の37分に同点ゴールを決めた。仙台Lは3勝1分け1敗の勝ち点10とし、暫定ながら2位をキープした。

 ホワイトボードをたたいた。ハーフタイムの仙台Lの控室に怒声が響く。「戦うことはどういうことかを示せ」。前半10分に先制点を許し、精彩を欠いていた。「全員とは言わないけど7、8人が弱気になっていた。カツを入れた。監督になって初めて。これだけ怒鳴り散らしたのは」。12年の創設からチームを率いる千葉監督の激しい感情が、選手を一変させた。

 後半からボールを支配する時間が増えた。32分にピッチに立った浜田は、いきなりドリブル突破でゴールに迫った。5分後にはDF佐々木繭(23)のクロスに飛び込み、GK武仲麗依(23)の捕球ミスを誘う。そのこぼれ球を右足で押し込んだ。「怒られてシュンとなるチームじゃない。前向きになれる」。落ち込むどころか、ゴールへの意欲に火が付いた。

 13年リーグ杯、15年皇后杯を含め、INAC神戸には過去2勝8敗。「選手の中にINACっていうのが、どこかにあると思うんですよ」と千葉監督は話す。前半に弱気になった多くの選手に、その劣等感があったと言える。「優勝を目指している以上、INACと(日テレ)ベレーザの壁を破らないといけない」と同監督。ハーフタイムの怒声は、今季の目標をもう1度呼び覚ます意味も込められていた。

 3試合連続で途中出場の選手が得点した。浜田は昨年7月に右足を骨折し、一時戦列を離れた。今季は開幕から5試合、スタメンを外れているが「出たくても出られない人もいる。今は試合に出ることがうれしい」と、ベンチで高い集中力を保つ。千葉監督は「交代した選手がゴールするのは、チームの強みだと思う」と言った。難敵に総合力の高さを示して、貴重な勝ち点1を獲得した。【久野朗】