<J2:札幌1-0栃木>◇第19節◇3日◇熊谷陸

 ベテランがクライトン欠場の危機を救った。コンサドーレ札幌はアウェーで栃木と対戦し、1-0で4試合ぶり勝利を挙げた。出場停止のMFクライトン(31)に代わり、今季初先発した砂川誠(31)が後半10分に先制ゴール。3試合引き分けと勝ちきれない試合が続いていたが、石崎信弘監督(51)が絶大の信頼を置く“スーパーサブ”の大仕事で、5月16日岐阜戦以来の勝ち点3を手にした。勝ち点は31で昇格圏3位との差は10あるが、13試合負けなしと好調を維持し、上位に食らいついていく。

 札幌史上最多240試合出場の「アニキ」が決めた。後半10分、右サイドでFWキリノが相手ボールをカット。後ろでパスを受けたMF藤田がゴール前に出したグラウンダーのクロスに走り込んだのは砂川だった。右足で角度の変えたボールは、ゴール左隅へと吸い込まれていった。「(藤田)征也のボールが良かっただけ。でも点を取れたことは素直にうれしい」。普段は表情を変えない仕事人も、第2節鳥栖戦以来17戦ぶりとなる今季2得点目に、少しだけ笑みを浮かべた。

 圧倒しながらもゴールが遠かった。前半開始50秒、砂川が中央から放ったミドルシュートはクロスバーに当たった。「あれが入っていればもっと楽な展開になったんですけど」。このシュートを皮切りに、何度も決定機をつくりながらも決めきれなかった。同27分には砂川の左CKをDF西嶋がヘディングするも、今度は左ポストを直撃。3試合引き分け中という状況もあり、嫌なムードが流れたが、ベテランが1発で変えた。

 石崎監督は「苦しい試合だったが、1-0で逃げ切れたことは次につながる。砂川はシュートのうまさなど、クライトンにはない良さを発揮してくれた」と目を細めた。今季17試合すべて途中出場で使ってきた砂川を先発起用した策が見事的中。4試合ぶりの白星奪取に、指揮官も胸をなで下ろした。

 期待に応える活躍にも、砂川は「終盤ボールに絡めず残念」と反省は忘れなかった。自分に厳しい31歳には、監督も選手も一目置いている。ケガの話には「どこというか…いろいろ」と明言こそしないが、古傷の腰と両ひざは常に悲鳴を上げている状態、今季もだましだましのプレーながら、攻撃のアクセントとして欠かせない存在となっている。

 ベテランの1発で手にした勝ち点3。残り32試合で昇格圏内の3位には勝ち点差10ある。過去、そこから昇格したクラブはないが、13戦不敗と勢いはうせてはいない。この1勝を勢いに変えていく。【永野高輔】