<天皇杯:名古屋1-1(PK5-3)清水>◇準決勝◇29日◇エコバ

 J1清水の今年の戦いが幕を閉じた。名古屋にPK戦の末に敗れ、05年度以来4年ぶりの決勝進出を逃がした。前半16分、今季チームを引っ張ってきたFW岡崎慎司(23)の2戦連続弾で先制したが、後半11分、PKで同点に追いつかれた。その後、勝ち越しを狙い、何度も名古屋ゴールに迫ったが、決定力を欠き、PK戦に突入。1人目のDF市川大祐(29)が失敗した清水に対し、名古屋は5人全員が成功。勝利の女神は清水に背を向けた。

 悲劇の結末はまるで神様のいたずらのようだった。成功すれば清水の敗戦が決まる名古屋のPK戦5人目、FW杉本から放たれたボールはクロスバーを直撃。失敗かと思われたが、はね返ったボールがGK山本海の背中に当たり、ゴールネットに吸い込まれた。この瞬間、2時間39分に及ぶ死闘とともに、09年の清水の戦いにピリオドが打たれた。

 思わぬかたちで就任5年目のシーズンを終えた長谷川監督は「ここで1年を終える準備はしていなかった。天皇杯のタイトルを取ってACLに出ることが最大の目標だった。PKと言えども負けは負け。言葉が出てこない」と、悔しさをにじませた。不運に見舞われたGK山本海も「自分で終わらせてしまった。120分間、チームメートは一生懸命に戦った。せめて1本ぐらいは止めたかった。応援してくれたすべての人に対して申し訳ない」と、ぼうぜんと話した。

 あと1歩に迫りながらの敗戦は、今季の戦いを象徴しているようだった。リーグ戦では夏場から13戦負けなしの快進撃で一時は10年ぶりの首位に浮上した。クラブ史上初の「年間リーグ制覇」への期待が一気に高まったが、リーグ終盤での5連敗で大失速。最終順位は7位で終わった。なんとかリーグ戦の悔しさを晴らそうと、臨んだ天皇杯だったが4強止まり。この日、FW岡崎の先制点をアシストしたMF本田は「最後の精度があと1歩足りなかった。パス、クロス、シュート、すべてがもう少しという部分だった」。主将のMF兵働は「もう少し勝負強くならないと、いつになっても変わらない」と、悔しさを押し殺し厳しい言葉を並べた。

 またしても、目標に掲げた「タイトル」は1つもとれず、8年連続の無冠となってしまった。それでも、試合後サポーターは大声援で選手たちをねぎらった。6年目の続投が内定している長谷川監督は「(今日は)素晴らしいゲームだったし、悲観することはない。前を向いてやっていくしかない」。2010年こそ「あと1歩」の壁を破りたい。監督、選手、サポーターの願いは同じだ。【為田聡史】