<J1:仙台1-0鹿島>◇第1節◇10日◇ユアスタ

 仙台が復興元年の第1歩を力強く踏み出した。被災地クラブ同士の対決となった鹿島とのJ開幕戦を、DF上本大海(29)の決勝ゴールと堅守で制した。今日11日で1年を迎える震災から立ち上がろうとする被災地に元気を与える1勝。同じ被災者として痛みを分かち合うチームが「東北のシンボル」を目指し、今季は宮城から本気でタイトルを狙う。

 ユアスタの歓喜は、東北の歓喜だった。仙台が熱い思いをピッチで体現した。決勝ゴールはC大阪から新加入の上本。後半17分、CKの折り返しを頭で押し込んだ。「去年は大阪にいて、遠くからの手助けしかできなかった。来てみないと、幅広い復興支援はできない。チーム全体、スポーツ界全体で盛り上げないと」。試合終盤は左足がつるまで攻守に奮闘し、完封勝ちの立役者となった。

 会場は1万8250人の超満員、160人の報道陣が集まった。震災から1年というタイミングで、被災地を背負って戦う仙台と鹿島がぶつかる意味。鹿島FWジュニーニョのヘッドを右足のつま先でかき出すスーパーセーブを見せたGK林は、以前言っていた。「Jリーグの開幕日が変わらない限り、毎年震災があった頃に開幕が来る。今年だけじゃなく、震災を忘れない気持ちを持って戦わないといけない」。

 復興支援で被災地を奔走する選手たちもまた、震災の被災者だった。当時ルーキーだったFW武藤はクラブハウスの風呂で地震に遭遇。「天井が落ちてくるかと思った」という状況の中、なぎ倒されたロッカーを飛び越え、ほとんど裸で外に逃げ出した。MF角田は「幸い被害は大きくなかったけど、自分らも被災者なんですよね」。同じ恐怖や苦しみを知るからこそ、被災地への強い思いはどこにも負けない。

 今季目指すのは「東北のシンボル」。昨年4位からタイトル獲得へ本気になった。2月のキャンプ中に出場したトヨタプレミア杯。タイ王者のブリラムに敗れ、紙吹雪が舞い、花火が打ち上がる優勝セレモニーを見せつけられた。「(MVPの副賞の)プリウスが欲しいんじゃない。オレらが欲しいのはタイトルなんだ。あれを取りにいくんだよ!」(手倉森監督)。味わった屈辱がモチベーションとなり、堅守速攻に磨きがかかった。

 鹿島には、同じく被災地支援に尽力するMF小笠原もいた。手倉森監督が「満男(小笠原)のコメントはずっと気になっていたし、被災地同士で明暗が分かれるのは少しつらい。勝った喜びより、無事終わって良かったという気持ち。インタビューで決勝点を誰が決めたか忘れていたくらい」と話すように、勝ち負けを超越した熱戦。「東北の力を示せたのでは?」という問いかけに「そうだね!」と即答した指揮官は、この日最高の笑顔だった。【亀山泰宏】

 ◆仙台のJ1開幕戦

 J1在籍5シーズンで4勝1分けと負けなし。4勝すべて1-0の最少得点勝利で、1分けは0-0のスコアレスドロー。5シーズンすべて無失点の完封スタートとなっている。なお、J2での開幕戦は4勝5敗と負け越し。