<ACL:東京4-2ブリスベーン>◇1次リーグF組◇2日◇国立

 初出場の東京がホームでブリスベーン(オーストラリア)に勝ち、3勝2分けの勝ち点11で同組2位以内を確定させ、決勝トーナメント進出を決めた。前半4分に先制を許したが、FW渡辺千真(25)のPKを含む2ゴールなどで逆転勝利をおさめた。

 自分が取ったPKを渡すはずがない。同点の前半44分、FW渡辺は相談などせずに、ボールを置く。「オレは絶対、譲りたくなかったんで。自分が取ったPKは自分で蹴りたいし、渡したくなかった」。意志が宿った右足を振り抜く。ゴールネットがちぎれそうになる勝ち越し弾だった。

 火の付いた攻撃性は変えられない。後半15分、MF谷沢のスルーパスに抜け出し、ゴール前で左足を振り抜く。左隅へ4点目のゴール。相手の闘争心を薄れさせるには十分の、この日2得点目だった。元日の天皇杯優勝で最後に出場権を勝ち取ったチームが、日本勢一番乗りとなる決勝トーナメント進出を決めた。

 ACLを浮上の踏み台にさえ変えていた。J1では3連敗中。「リーグ戦でなかなか勝てなくて、ふがいない試合が続いていたし、自分で点を取って勝ちたかった」。Jで今季初先発となった4月21日の仙台戦(ユアスタ)では0-4の大敗。「悔しかったですねえ」と振り返る。同28日の清水戦(味スタ)ではベンチスタート。結果を残さなければチャンスが来ない現実と向かい合った。

 チームも攻撃力を失いつつあった。Jの最近2戦は完封負け。さらに前日1日の練習中にFW平山が足を故障し、この日もベンチ入りメンバーを外れた。苦しいチーム状況を感じていたからこそ、渡辺はPKを譲らなかった。ACLばかりに先発してきた「ミスターACL」から、真のエースとなる「ミスター東京」へ-。「なれたらいいですね、なります」と笑った。

 次戦は6日の新潟戦(東北電ス)だ。ACLは16日の蔚山現代戦(蔚山)で1位突破をかけた戦いが待つ。雨の聖地で取り戻した攻撃的サッカー。渡辺の「我」の強さが、東京の新たな武器となる。【今井貴久】