日本代表FW本田圭佑(29=ACミラン)が買収し、実質的なオーナーとなったオーストリア3部SVホルンのトライアウト(入団テスト)が6月30日、都内で行われた。約100人が参加。本田が指示したメニューをこなし「海外組」への夢を追った。同時に、関東を拠点にした高校生年代のユースチーム設立の計画も判明。本田が描いた、ホルンを頂点とし全国に展開するスクールまでの全世代を網羅するピラミッド型の組織が整う。

 本田と同じ「海外組」への道を切り開こうと、トライアウトには約100人が集まった。書類による1次選考を通過した選手に、まず課せられたのは本田の指示による超ハードなフィジカルメニューだった。本田もオフにこなしているというピッチ上の約100メートルを時間制限付きで計24本走り切るインターバル走。直前には、海外に滞在中の本田が前日29日にメールで参加者に伝えてほしいと連絡してきた伝言がひと言だけ、伝えられた。

 「Never give up(あきらめるな)」

 暑さもあり離脱者も出たが、息つく間も与えない。走りきった直後に20分ハーフのフルコートのゲームが組み込まれた。ホルンの神田康範最高経営責任者兼副会長は本田の狙いを「今日はフィジカル重視です。これだけしんどいメニューの後でもゲームでチームのために走ることができるかどうか。それを見ています」と代弁した。

 同副会長は、今日1日にも発表される2次通過者について「10人いい選手がいれば10人。0人という可能性もある」と説明。いきなり厳しいハードルが設けられた。不在でも、本田イズム満載の約7時間。通過者は、7月上旬に現地ホルンで本田とともに練習し直接合否を判定される。

 ホルンの選手選考と同時に、水面下でユース(高校生)のチーム設立に動いていることも判明した。拠点は関東となる見込み。これでホルンを頂点にユース、そして東京・清瀬市内と大阪・摂津市内で傘下のチームとして活動するジュニアユース(中学生)、全国に展開中のスクール(小学生以下)と、育成からトップまでピラミッド型の組織が完成することになる。

 自身のスクールをひとつの出発点に、子どもたちに海外でプロとしてプレーする道筋を通す。ただ、これも壮大なプロジェクトの序章にすぎないようだ。神田副会長は「本田選手には大きな夢として、世界一のサッカー組織をつくりたいという思いがある」と一端を明かした。本田の目指す先は、いつどのステージでも「世界一」。その哲学をまずピラミッド型組織を舞台に注入する。【八反誠】

 ◆トライアウト 参加者はポジションごとに約11人が計10組に分けられ、2組同時に約1時間のテストを受験した。参加者の年齢は17歳から30歳まで。大学生が多かったがドイツ、シンガポール、オーストリア、タイ、米国など世界各地のクラブに在籍経験のある幅広い顔ぶれ。東京V在籍経験のある元Jリーガーや、高校時代に強豪校で全国制覇を経験した選手もいた。