プレーバック日刊スポーツ! 過去の5月31日付紙面を振り返ります。2011年の1面(東京版)はインテルミラノ長友イタリア杯優勝でした。

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 インテルミラノの日本代表DF長友佑都(24)が、飛躍のシーズンを優勝で締めた。イタリア杯決勝のパレルモ戦に右サイドバックでフル出場し、豊富な運動量で攻守に貢献。3-1で2季連続7度目の優勝を飾った。昨年のW杯南アフリカ大会後に移籍したチェゼーナで評価を高め、今年1月末にビッグクラブのインテルにステップアップ。移籍後初のタイトル獲得で、技術、精神両面での成長を実感、「世界一のサイドバックに近づく」と来季の目標を明言した。

 表彰式後、長友は選手らから少し離れていたレオナルド監督を、MFスナイダーらとつかまえた。優勝杯を持たせ、他の選手を呼んで胴上げをした。監督を5回、宙に舞わせると、この日一番の笑顔になった。

 長友 チョー気持ちいい気がします。監督がインテルに呼んでくれたっていうのもあるし、助けてもらった。監督のために絶対に優勝したかった。

 出場停止のDFマイコンに代わって普段の左ではなく、右サイドバックで出場した。得意の攻め上がりは控えめにした。前半26分に先制。優勝のために、より確実な守備重視を冷静に選択した。リーグ制覇を逃し、無冠で終わればレオナルド監督の去就が不透明になる。勝利が必要な試合で、やるべき仕事をやり抜いた。

 長友 早めに点が入ったので、しっかり守れば問題ないという気持ちでやってました。今日はみんな、いつも以上に気合が入っていた上に、落ち着いた空気も流れていた。みんなの経験の大きさを僕も感じた。この優勝の感覚を覚えておいて、持ち続けていきたい。

 昨夏のチェゼーナ移籍から定位置奪取、そして今年1月のインテル入り。順調に見える道のりも、本人には「壁」の連続だった。インテル移籍直後は攻め上がってもパスが来なかった。スター選手たちへの気後れもあった。地元メディアに「チェゼーナとインテルでは違う」「上がったときに何をしていいかわからない」と酷評もされた。その逆境を肥やしにした。

 長友 チャレンジして失敗して、壁を乗り越えるということの繰り返しでした。でも、チャレンジしているからぶつかるんであって、いい壁にぶち当たったことで成長できた。

 困難に挑むことで、高いレベルのプレーを体感し、自分のものにした。その姿勢で周囲を納得させた。長友自身の気持ちも変わった。マイコンは「憧れ」から「ライバル」に。目標は残留やアピールではなく、チームの「タイトル」になった。

 長友 一番変わったのはメンタルですね。どんな舞台に立っても、どんな選手とプレーしてもぶれなくなった。余裕を持ってやれると、自分の持つ技術以上のものを発揮できたり、周りが見えたり、判断できたり、そういうのが明らかに変わってくる。

 世界最高レベルでもまれて得た経験を、間もなく合流する日本代表で伝える役割も自覚している。

 長友 W杯がもう何年も前に感じる。この1年、10年分ぐらいの経験をしたんじゃないかというぐらい濃すぎるんで。(代表でも)どんな状況でもぶれないということを、行動で示していきたい。

 ピッチ上のプレーそのままに突っ走った激動の1年を、最高の形で終えた。そして、長年の夢が、実現可能な目標になった。

 長友 (来季の目標は)世界一のサイドバックに近づくということです。

 その表情は充実感と自信に満ちていた。

※監督や選手は当時のもの