2年後までに偉大な2人を超える! スペインの強豪セビリアへの移籍が決まった日本代表MF清武弘嗣(26)が、日刊スポーツのインタビューに応じた。移籍を決断した背景には、18年W杯ロシア大会までに、日本の中心でもある本田圭佑(30=ACミラン)と香川真司(27=ドルトムント)から定位置を奪うという固い決意があった。新たな挑戦に乗り出す日本の新エース候補に迫った。

 清武の目の前には高い壁があった。今までは越えられるとは思っていなかったその壁を、越えよう! 本気で思ったのは、今年に入ってからだった。東日本大震災で被災した福島へと向かう特急ひたち。車窓の外に続く田園風景を見ながら思いの丈を明かした。

 「代表には圭佑君、真司君という大きな人がいる。今まではどこかに、その後ろでいいという気持ちがあったんです。2人に比べたらキヨタケはまだ小さいから。でも26歳になって、自分は変わらないといけないと思った。だから今年に入ってから、プレーだけでなく、気持ちの面で大きな変化があったんです」

 欧州リーグ3連覇中のセビリアからオファーが届いたのは、そんな時だった。新シーズンには欧州チャンピオンズリーグにも出場する強豪だ。生まれ変わろうとする清武にとって、最高のタイミングだった。

 「代理人から話を聞いたのは、代表で千葉合宿をしている頃(5月下旬)。真司君に相談したら『行った方がいい』と背中を押してくれた。W杯まで残り2年。このタイミングしかないと思いました。ここで変われなければ、2年後のW杯はない。僕は壁にぶち当たりたいんです。ドイツに渡ったこの4年間、代表では出られない時期もありましたけど、クラブでは壁にぶち当たっていない。ブンデスでは年間30試合はリーグ戦に出ている。いつ自分のポジションを取られるか、セビリアではドキドキしながら成長したい。苦しまないと、代表の中心でW杯に出ることはできないから」

 福島訪問は移籍が発表された翌日の今月11日のこと。スペインに渡る前に見たかったのは、小学時代に憧れたJヴィレッジだった。震災後に事故を起こした福島第1原発から20キロ。事故処理の拠点として、かつての緑のピッチは、駐車場と資材置き場に変わっていた。

 「ここは僕にとって夢の場所。小学生の頃、九州トレセンのメンバーと何度も来ました。小、中時代はここに来るのはすごいことだった。ワクワクしながら門をくぐった。今はサッカーができる状況ではないけれど、必ず元に戻って欲しい。僕と同じように、子供たちが目指す場所になって欲しい。そのために僕ができることは何でもしたい」

 今年4月には弟功暉(J2熊本)が住む熊本地方も大地震に見舞われ、心を痛めた。だからこそ、周囲へ元気な姿を届けたいという願いは強い。

 「セビリアでの最初の1年間は大きなポイントになると思っています。自分にとって分岐点にしないといけない。キヨタケは海外でも、代表でも、中心でやれる。そんな姿を見せたい」【取材、構成=益子浩一】