【ペララダ(スペイン)22日=塩畑大輔、山本孔一通信員】MF中村俊輔(31)が所属するエスパニョールで、FKキッカー争奪戦が勃発(ぼっぱつ)した。21日午後の紅白戦で、ゴール正面での直接FKのチャンスがめぐってきたが、中村以外の複数の選手がキッカーを志願してボールを取り囲んだため、中村は近寄ることすらできなかった。その場では引き下がったが、22日の会見では「いいポジションだったら蹴らせてもらう」と明言。8月末のリーグ開幕までに、不動のキッカーの座を奪い取る決意を示した。

 中村はボールから、目をそむけるようにして遠ざかった。21日午後に行われた、15分1本の紅白戦。中村のチームがゴール正面でFKを獲得した瞬間、キッカーを希望する選手がボールに殺到した。その中からMFデラペーニャ、ベルドゥー、DFパレハの3人が、ボール周辺に残った。最後はパレハが右足でシュート。カーブがかかったボールは壁に当たって外れた。

 パレハは「去年もネネや、ルイス・ガルシアなどいいキッカーがいる中、自分がFKを蹴ってきた」と、キッカーに意欲満々。06年の欧州チャンピオンズリーグでは、マンチェスターU相手に2戦連続FKゴールを決めた中村といえども、自己主張のぶつかり合いのようなスペインでは、簡単にはキッカーを譲ってもらえそうにはない。

 紅白戦のFKチャンスではあっさりと引き下がったように見えた中村だが、本音は違っていた。22日昼の記者会見では「昨日はあくまでミニゲームだから、キッカーに執着しなかっただけ」と言い、キッパリと「チームには左利きのキッカーがいないし、良いポジションだったらボールに近づいて、蹴らせてもらう」と言い切った。

 合宿開始直後には「自分のFKを見てもらって、実力を証明するというか、キッカーを任せてもらうことを納得してもらう」と話していた中村。8月29日のリーグ開幕までは、まだ1カ月以上の時間もある。不動のFKキッカーとしてチームメートから認められるように、練習や実戦でアピールしていくつもりだ。

 [2009年7月23日9時44分

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