男子ハンマー投げの室伏広治(41=ミズノ)が、唯一無二の選手になる。日本選手権(24~26日、瑞穂)を前に17日、都内で公開練習。五輪参加標準記録77メートル00には及ばないが、70メートル級の投てきを連発した。同選手権20連覇から2年ぶりの出場で全力を尽くす覚悟。室伏のV20は、半世紀以上前に活躍した吉野トヨ子と並んでおり、節目の第100回大会に勝てば、歴代単独トップになる。

 夕日が差すグラウンドで、ハンマーが弧を描いた。室伏が、11年世界選手権大邱大会前以来約5年ぶりに公開練習を敢行。ぐっと力を込めて、投てきを繰り返した。練習を見守った日本陸連の等々力投てき部長は「70メートル近くまでいっている。動きはさすが」。室伏は「感触はいい。技術的には、今日の投げ方はいい。あとは試合でどれくらいか」と笑顔を見せた。

 2年ぶりの大会出場。東京五輪組織委員会など多忙を極めるが、5月下旬に出場を表明した。「アスリートなので4年に1度をサイクルに考えてきた。自信があるわけじゃないが、チャレンジしようということ」。前日16日には米大リーグでイチローが日米通算4257安打を記録。1歳年下の室伏は「イチロー選手は困難を乗り越えるのが素晴らしいところ。結果が保証されているからやるのではなく、全力を尽くすことが重要」と自らに言い聞かせるように、感想を述べた。

 「鉄人」といえども五輪参加標準記録77メートル00の突破は簡単ではない。父重信氏は「練習量はかつての100分の1。そんなに甘いものじゃない。70メートルを飛ばすのにも(本格練習再開から)半年はかかる」と見通しを示した。室伏も「リオは状態としては難しいかな」と現実を直視した。

 ただし優勝すれば、同選手権の単独最多となる21回目の優勝になる。室伏は「ベストであれば、それなりの成績だと思うが、順位の前に1日1日いい状態にすること」。男子ハンマー投げは大会第1日の24日。2年ぶりに戻ってくる鉄人に、注目が集まる。【益田一弘】

 ◆リオへの道 枠は最大3で日本選手権の結果で決まる。同種目は日本陸連の派遣設定記録が79メートル11、参加標準記録が77メートル00。現時点で参加標準記録突破者はいない。室伏が日本選手権で77メートル00をクリアして優勝すれば、即時内定となり、5大会連続五輪出場になる。