「スポーツがビジネスになる」

 2016年9月、革命が起きた。「BLEAGUE」が設立された。

スタンドは満員のファンで埋まり、Bリーグの開幕戦が行われた(撮影・河野匠)
スタンドは満員のファンで埋まり、Bリーグの開幕戦が行われた(撮影・河野匠)

■NBLとbjリーグ、2つのリーグ

 バスケットリーグは10年間、2つのリーグが存在していた。国内のトップリーグがNBLとbjリーグに分裂していたのだ。この異例の事態が、FIBA(国際バスケットボール連盟)からJBA(日本バスケットボール協会)は、問題視されていた。FIBAが提示した期限の中でJBAは解決しなければならなかったが、結局提示された期限までは解決できなかった。さらには、2014年冬にはリオデジャネイロオリンピック予選も一切参加できなくなった。バスケットボール協会に登録している選手は当時、63万人以上いた。もし、バスケットリーグがなくなってしまったら、これらの選手は何処へ行くのだろう。努力はどこで発揮すればよいのか。

 「アスリートファースト」

 この言葉からかけ離れた事態だった。そんな時、Jリーグの初代チェアマンの川淵三郎さんに、FIBA側から新リーグ設立のためのタスクフォースのチェアマンに就任依頼がきたところから「BLEAGUE」は始まっている。当初、bjリーグとのNBL2つに分かれていたリーグを統一するのは大変なエネルギーだっただろう。なぜなら、大きな課題として全47チームある。打ち立てた解決策は、1部から3部のピラミッド型のリーグ体制。サラリーキャップを外すことなど様々あった。

 まさに革新的。

 現在、JBAの会長は元バレーボール選手の三屋裕子氏になり、「BLEAGUE」のチェアマンはJリーグの常務理事も務めた大河正明氏だ。川淵氏から依頼を受け、立ち上げから尽力した。

 「最初はガバナンスの確立が困難だった」

 大河氏は、強力なリーダーシップ、スピーディーな意思決定のできる組織を目指した。また、他方からのビジネスパーソンを入れ込まなくてはいけないという思いで人事にも取り組んだ。閉鎖的な環境から脱却すること。つまり、権益の統合を計り、スポーツビジネスモデル「デジタルマーケティング推進」を掲げた。全ての顧客観点をデジタルで結びつけたのだ。顧客データを管理し、マネジメントをしていく。


■スマートフォンでチケット受け取り

 私は何度も観戦に行っているが、スマートフォンで予約した入場券は操作で「チケットを受け取る」にすると、そのまま画面に「Thank you for coming」というスタンプが押される。アリーナに入る瞬間から「なんか新しいな」と感じる。会場内ではMCが既にウォーミングアップ中の選手の解説をしたりして、始まる前からアリーナは熱気に溢れている。

Bリーグの開幕を宣言する大河正明チェアマン(写真は2016年9月22日)
Bリーグの開幕を宣言する大河正明チェアマン(写真は2016年9月22日)

 「BLEAGUE」。まず、私はロゴがかっこいいと感じた。そのロゴを見ると、バスケットのことを思い出すし、おしゃれで印象に残る。さらに「アリーナが大切」と大河さんが話すように、アリーナの演出も圧巻だ。開幕戦の気持ちの入った演出には、未来を感じた。視覚、聴覚が刺激され、気持ちが高ぶる。

 ハーフタイムショーは毎週異なる。前回はキッズのチアリーダーのショーだった。最後まで決して飽きない。

 立ち上げの時、それぞれのチームに企業名を残すと約束した。その約束通り、チームに企業の名前が残り、「必ず2016年秋には開幕」と掲げた目標も達成した。エンターテイメントとして、スポーツが新しい形で日本にやってきた。これからなのだ。

 「常にポジティブに、そして一生懸命だと知恵がでる」

 「ネガティブと言い訳は自分に対して禁止している」

 大河さん自身のモットーからも分かるように、アスリートの周りを見渡せば素晴らしい人々がたくさんいる。スポーツは流行なんかではなく、熱い思いで戦っている人たちがいる限り、永遠に続く「ビジネスエリア」になると感じる。アスリートが輝ける場所を提供する。それが観客を感動させ、アスリートへの応援を生む。

 「全国にBLEAGUEのチームができるように」

 現チェアマンの大河さんは周囲の仲間たち、サポーターたちと「革新」をアップデートしていくのだろう。【伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表】