<高校総体:ボクシング>◇15日◇秋田・秋田市立体育館

 ボクシングで、大会史上2組目の兄弟Vが誕生した。ピン級で弟の綾瀬西・井上拓真が1年生王者に輝くと、続くライトフライ級で兄の相模原青陵(ともに神奈川)・尚弥(3年)が高校5冠となる2年ぶりの優勝を飾った。弟は兄の獲得タイトル数更新を宣言、兄は最後の高校生の大会を制し、9月の世界選手権でのロンドン五輪切符獲得に弾みをつけた。兄弟Vは09年の藤田兄弟(大和、健児=ともに倉敷)以来。

 井上兄弟が大会史に名を刻んだ。前後で行われたピン級とライトフライ級で、2人は視線を交わし「絶対勝つぞ」と決意を新たにしていた。まずは弟拓真が登場し、鋭い踏み込みから高速のコンビネーションを連発。判定ながら12-4の快勝で先に優勝を果たした。

 リングを下りた弟とハイタッチを交わし、兄尚弥の集中力はますます高まった。「必ず優勝しようと思った。弟には負けられないので」と兄。冷静な試合運びで確実にポイントを稼ぎ、こちらも判定ながら12-2で圧倒した。目標としてた兄弟Vの達成、勝って当たり前の重圧に打ち勝った喜びに、勝利の瞬間はガッツポーズが飛び出した。

 兄は高校5冠を獲得した。パワーとスピード、技術の3拍子がそろったボクサーで、7月のプレジデントカップでも高校生ながら日本代表として金メダルを初獲得した逸材。9月の世界選手権も選考会を経て出場を決めており、8強入りでロンドン五輪切符も獲得できる。10月の国体は期間が重なり欠場するため「最後の高校生の大会をいいカタチで終われた。次は世界選手権でベスト8に入ってロンドン五輪に行きたい」と新たな目標を掲げた。

 弟は、同じく1年生でピン級を制した兄に並んだ。こちらも7月に世界ジュニア選手権(2回戦負け)の代表に選ばれるなど、将来有望なボクサー。「自分の距離で戦えたので、判定だけど勝ったと思いました。高校のタイトルでお兄ちゃんのを超えたい」とこちらは兄の5冠超えを宣言した。

 2人が所属するジムの会長で父の真吾氏は「プレッシャーがあったからほっとした。でもここからが新しいスタート」と先を見据えた。今後も井上兄弟がボクシング界を席巻しそうだ。【豊本亘】