絶対王者の内村航平(26=コナミ)が、力を抑えながら8連覇を達成した。予選をトップで通過し、技の難度を下げる安全運転。それでもこの日最高の90・550をマークし、合計182・700で圧勝した。8回目の優勝は、竹本正男、小野喬の7回を上回る単独最多。すでに代表に決まっている世界選手権(10月、英グラスゴー)での6連覇に弾みをつけた。女子は寺本明日香(19=中京大)が初優勝した。

 予選の時の内村ではなかった。跳馬で成功した大技リ・シャオペンは封印。鉄棒の離れ技も減らした。それでも、2位田中佑に2点差以上つける圧勝。「今日は心が疲れていた。それでも無難に美しく、できたと思う」と胸を張った。

 この日、朝起きて「何か(気持ちが)上がってくるものがなかった」と明かした。「この状態でいつもの構成だと、ケガをする」と演技構成を変更。各種目の難度を落として「平均15点を取れるようにした」という。言葉通りに6種目で約90点。予選の貯金を使って危なげなく逃げ切った。

 気持ちが乗らなかった理由は「初日に出し切った感があった」から。予選では昨年よりもDスコア(難度点)を上げ、進化した姿を見せた。「世界も僕以上に上げているから」と話したのは、五輪や世界選手権で勝つため。その予行演習は成功した。この日は確実に勝つだけでよかった。

 8回目の優勝は単独最多だが、本人は「全然気にしていない」と言い切る。この間に2位が6人入れ替わるなど、決して競技寿命が長くない体操。常に進化を求め、安定を保ち、計算しながら勝ちきる内村だからこその大記録といえる。

 他の選手にとっては世界選手権代表選考会のこの大会だが、内村はすでに実績から代表に決定。世界選手権で個人総合6連覇をすれば、五輪代表も内定する。1人だけ別ルートで目指す五輪。「このままリオまで走っていけたらいい」。すべての演技が、リオの金メダルにつながっている。【荻島弘一】