五輪柔道3連覇の野村忠宏(40=ミキハウス)が、こだわりの「一本柔道」で現役に別れを告げた。全日本実業選手権男子60キロ級に、引退試合として出場。3回戦で昨年3位の椿龍憧(23)に腰車で敗退も、2回戦までは得意の担ぎ技で連続一本勝ちしてファンを喜ばせた。

 「豪快に勝って、豪快に負けて。そういう自分の柔道人生だったのかな」。96年アトランタから3大会連続金メダルの五輪でも、全15勝中12勝が一本だった。昨年の倍、約3000人の観客に生きざまを披露しての幕引きに「少々寂しい思いはあるけど、正直ここまでようやったなと。胸を張っていい」とうなずいた。

 3歳から始めた柔道。少年時代は「負けると涙が前に飛んだ」と言われるほど悔しがり、その反骨心が野村を支えてきた。「柔道に対する気持ちは永遠に燃え尽きることはない」という。だが、傷だらけの体は、もうついてこられなかった。「長く酷使した体の限界。こればかりはどうしようもない」。試合を終えると、2階席へ向かった。愛する家族や友人の前で、最後は万感の涙を流して競技人生に幕を閉じた。【木村有三】