日本が悲願のベスト8進出に望みをつないだ。日本(世界ランク12位)はサモア(同11位)に完勝し、通算2勝1敗(勝ち点8)で初めて1大会2勝を挙げた。FB五郎丸歩(29=ヤマハ発動機)のPG4本などで過去3勝11敗の相手に快勝。2トライ(T)にとどまり、4T以上に与えられるボーナスポイント(BP)は得られなかったが、確実に勝利を得た。上位2チームが突破となる1次リーグ最終戦は11日(日本時間12日)に米国と戦う。

 日本のプレーは南アフリカ戦をほうふつとさせた。大きい相手に出足鋭いタックル、すぐにかけつける味方の加勢。攻撃でも速いパス回しで体を当て続ける。ラインアウトや、スクラムなどのセットプレーで起点をつくって押し込んだ。チームとして意思が統一されていた。最後は、五郎丸がボールを蹴り出してノーサイド。16得点を挙げた五郎丸は「我々が準備してきたことを、グラウンドで表現できた。W杯を楽しめています」と笑顔を見せた。

 第1戦同様、五郎丸の右足が勝利を引き寄せた。前半8分、PGで先制。サモアの焦りによる反則を誘発し、同16、19分と2人のシンビンにより数的有利に立った。34分には中央から約30メートルのPGを確実に決めた。終了間際にはWTB山田のトライ後、難しい位置からゴールも決めた。

 後半も8分、19分にPGで差を広げた。第1戦の9本中7本に続き、この日は8本中6本成功。「求められていることが高いので、まだまだ満足していない」。今大会通算45得点とし、この時点で得点ランクトップに立った。同時に、03年大会の栗原徹が奪った40得点を超え、W杯での日本代表歴代最多得点となった。

 南アフリカを倒す歴史的大金星で高まる人気と注目。一方第2戦では、ゴールライン直前でのノックオンなど、攻め急いでトライの好機を逃した。ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)はスコットランド戦から一夜明けた9月24日、「サモア戦でどちらが本当の姿か分かる」と話していた。第3戦に向けて本格的な練習が再開された同28日の朝、指揮官から「集中しよう」とげきが飛んだ。リーチ主将は「そこまでは南ア戦の話もまだ出ていた。変わった。サモアの話だけになった」。五郎丸のキック、流れるような攻撃、懸命なタックル…。選手たちは自らの力で、強い姿が本物だったと証明した。

 あとは米国戦を残すだけ。過去わずか1勝だった日本ラグビーの歴史をすでに変えた。「しっかり準備して力を100%出すことだけ。我々はチャレンジャーに変わりはない」と五郎丸。2勝1敗とし、誰もが難しいと感じていた目標の8強進出に望みをつなげた。【岡崎悠利】