浅田真央(25=中京大)が納得の演技で復帰シーズンを締めくくった。9度目の大舞台で最低の7位に終わったが、合計200・30点で今季の自己ベストを更新した。1年間の休養から復帰した今季は12月のGPファイナルで最下位の6位に沈むなど低迷。「自分たちの時代は終わった」と、引退も頭をよぎったという。競技者と表現者のはざまで揺れ動いたことを吐露しつつ、来季を見据えた。

 滑り終えた浅田の表情がすべてを物語っていた。目を潤ませ、天を仰ぐ。笑顔で何度もうなずくと脱力したように両手をリンクに垂らした。ショートプログラム(SP)では、冒頭の3回転半を失敗するなどミスが重なり、9位に沈んだ。「自分の甘さが出てしまって。自分に対してもっとストイックにやっていかないとと思って」。強い気持ちでフリーに臨んだ。

 代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は回転不足も着氷すると割れんばかりの拍手が会場を包んだ。オペラ「蝶々夫人」の切ない歌声に寄り添う、浮遊するような滑りは細かなミスをも覆う、美しさだった。「今日は自分の満足できる演技ができた。シーズンが終わったな、ってほっとしてます」。納得の表情を浮かべた。

 14年ソチ五輪後に1年間休養。そこから復帰したのは競技の刺激を求めたからだった。だが、予想以上に厳しい戦いが待っていた。

 浅田 なかなかうまくいかないことも多くて、復帰しないほうがよかったかなとも思ったときもありましたし、自分たちの時代は終わったのかなって思った。

 「選手として結果を目指す」と考えながらも力が出せず、年下に突き上げられる。最下位に終わった12月のGPファイナルの後、気持ちは落ちた。

 12月末に札幌で行われた全日本選手権。SPでシニアワースト得点を出した夜、元フィギュアスケーターでタレントの姉舞に連絡した。「最後になるかもしれないから見に来てほしい」。だが、フリーでの満足いく滑りに引退は思いとどまり、戦う気持ちが再び芽生えた。今度は「一緒に戦うためにボストンに来てほしい」と頼んだ。今まで試合で着けたことのなかった胸のネックレスは「M」の字が入った舞とおそろい。「お守り」を力に戦った。

 復帰のシーズンを終えて心を占めたのはやって良かったとの思いだ。

 浅田 自分が復帰してなかったら後悔していたと思う。こうして現役に戻ってきて、たくさんの方に応援してもらえて、それが私はすごくうれしいです。

 今は、結果を出すことと表現を極めること「両方、というのが理想」と話す。「自分なりに1歩1歩この経験を次にいかしていこうと思ってます」と来季を見据えた。【高場泉穂】