快進撃が止まらない。世界66位の大坂なおみ(18)が、ツアー自身初の4強入りだ。予選勝者で同107位のサスノビッチ(ベラルーシ)に6-3、7-6の1時間33分でストレート勝ち。今大会1セットも落とさず、準決勝に進出した。大会の日本女子としては05年浅越しのぶ以来11年ぶりの4強入り。ツアーの格であるプレミアで日本女子がベスト4入りするのは、09年シドニー国際の杉山愛以来となった。次戦は今日24日、同20位のスビトリナ(ウクライナ)と対戦する。

 最後、大坂が祈った。「入って。お願い!」。その祈りが通じた。マッチポイントで時速193キロのサービスエース。ランク下にてこずりながらも、第2セットをタイブレークで振り切り「何とか勝てて、すごくうれしい」。勝って当然という重荷をふりほどいた。

 準々決勝の相手は9月の全米準優勝で6位のプリスコバ(チェコ)を想定していた。しかし、勝ち上がってきたのは予選勝者で107位のランク下。「勝たなくちゃいけないと思った。難しかった」。大坂を指導する吉川真司女子代表コーチも「気持ちのコントロールで波があった」と話す。

 まだ18歳。リードしていても、思い通りにならないと、集中が切れる。第2セットの第2ゲームで自分のサービスゲームを落とすと、思わずかんしゃくが爆発。時速200キロのサーブを放つパワーで、ラケットをたたきつけた。ストリングスについていた振動吸収止めを吹っ飛ばした。

 あっという間に0-5の大ピンチに追い込まれた。それでも気持ちを切り替え「目の前のプレーに集中した」と猛追。ラケットを投げたことも「忘れちゃった」と、忘却のかなたへ押しやり、タイブレークに持ち込み、一気に逆転した。最後は、冷静に「少し態度は直さないとだめね」と反省しきりだった。

 11年ぶりの日本女子の大会4強入りに、土橋登志久女子代表監督も「もう間違いなく代表候補の1人」。17年2月に行われる女子国別対抗戦フェド杯で日本代表デビューも濃厚だ。この勝利で26日に発表される最新世界ランクでも自己最高の50位近くまで浮上する。

 大坂に対する市場価値も世界が注目する。全米後、錦織圭の事務所で世界的マネジメント会社のIMGと契約した。その途端の快進撃に、なおみ株は急上昇。身長180センチ、規格外のパワーは誰にも止められない。【吉松忠弘】

 ◆女子世界ツアー大会 女子世界ツアーは72年に創設。国際連盟(ITF)が管轄する4大大会(全豪、全仏、ウィンブルドン、全米)と、賞金総額25万ドル以上のWTA(女子テニス協会)公認大会をツアー大会と呼ぶ。WTAツアー大会は、賞金総額や歴史によって、大きく5段階に分かれる。4大大会に次ぐのが年間4大会しかないプレミア・マンダトリー(義務の意味)。次がプレミア5で年間5大会、そして今大会が属するプレミア700で、年間12大会を開催する。最も下にあるのがインターナショナルで約35大会を開催する。