道産子の絆で夢をかなえる。昨年12月、7人制ラグビー女子のトライアウトに合格した、08~10年の日本選手権陸上女子100メートル障害3連覇の寺田明日香(27=東京フェニックス)が20日、本格的にラグビー選手として始動した。

 都内での日本代表強化合宿に練習生として参加。168センチ、股下84センチの美脚をあらわにし、パス回しやステップなどの基礎練習を行った。寺田は「練習生なのでまずは正式に代表に入らないと始まらない。今はしっかりと基礎を学びつつ、体重と筋力を増やして国際大会で戦える体づくりをしたい」と話した。

 きっかけは同じ北海道出身でリオデジャネイロ五輪代表の桑井亜乃(27)の存在があった。寺田は恵庭北時代に100メートル障害で高校総体を3連覇し、09年世界選手権ベルリン大会などに出場した。最大の武器は100メートル11秒71のスピード。陸上で五輪を目指していたが、12年ロンドン五輪は故障で出場できず、翌13年に引退。そんな時、同級生で帯広農業時代に円盤投げで国体入賞を果たした親友の桑井から「明日香もラグビーを一緒にやろうよ!!」と誘われた。しかし、「アスリートには戻りたくない」。号泣しながらそう断った。

 14年3月に一般男性と結婚。同4月に子どもと福祉を学ぶために早大人間科学部に入学し、同8月に長女果緒ちゃん(2)を出産した。昨年、リオ五輪7人制ラグビーでの桑井らのプレーを見て、気持ちが変化した。日本代表は外国人選手に体、スピードともに負けて結果は10位。「私のスピードが少しでも力になれば。陸上で果たせなかった五輪出場の夢をラグビーで目指したい。ラグビーでメダルを取りたい」。3年以上のブランクがありながら、ラグビー選手になることを決意した。

 「最初は子どもと一緒に東京五輪を見たいという気持ちでしたが、自分がプレーしているところを見せたいという気持ちになりました」

 元アスリートとしての強い気持ちもよみがえった。現役時代は50メートル6秒2であったが、昨年9月に計測した時は7秒2まで落ちていた。「こんなんじゃ、世界と戦えない」。時間を見つけてはトレーニングに励み、6秒52まで戻った。ラグビー選手として肉体改造中で、47キロだった体重を60キロまで目指している。「妊娠時のMAXです」。1食320グラムのご飯を3杯食しているという。

 現在は選手、母、早大生と三足のわらじを履く。親友と夢実現まで残り3年半。27歳のママさん選手として第2の人生がスタートした。