浅田真央とキム・ヨナ。2人は1990年に生まれた。誕生日はキム・ヨナが9月5日、浅田はその20日後。ほっそりとした体形に切れ長の目。よく似た2人の10年にわたる戦いは日韓両国で注目を集め、フィギュア人気に拍車をかけた。

 浅田はかつてバンクーバー前のキム・ヨナとの関係を「勝ちたいという思いが強くなってしまう時もあった。しかし、それは自分を成長させ、強くしてくれていた」と語ったことがあった。12日の引退会見では「互いに刺激を与えながら、もらいながら、スケート界を盛り上げてきたんじゃないかな」と思い出を振り返った。

 初対決は04年12月のジュニアGPファイナル。浅田は2位キム・ヨナに35・08点差をつけ優勝した。それでも「将来ライバルになると思う」と才能を見抜いていた。一方のキム・ヨナは「どうして、よりによってあの子が私と同じ時代に生まれたのだろうと思った」と後に自伝で語っている。初対決時に撮った写真を自室の机に飾り、敵対心を燃やした。

 トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を武器に圧倒していた浅田がキム・ヨナに初めて敗れたのは06年の世界ジュニア選手権。翌年からキム・ヨナがブライアン・オーサー氏に師事し、正確な演技、表現力を磨くと形勢は逆転。09年10月のGPフランス杯では36・04点差をつけられて2位に終わった。生前の母匡子さんに「どうして私ばっかりダウングレード(1回転下の判定)を取られるの」と話したこともあった。10年バンクーバー五輪はキム・ヨナに敗れ、銀メダル。テレビカメラの前でこぼれる涙を拭った。

 14年ソチ五輪では連覇を逃した2位キム・ヨナが引退宣言。2人は「お疲れさま」と同じ言葉で互いをねぎらった。ジュニア時代から数え16戦6勝10敗。強いキム・ヨナの存在が、浅田をより輝かせた。【高場泉穂】