フィギュアスケート女子でバンクーバー五輪5位の安藤美姫(22=トヨタ自動車)がフリーで前代未聞の後半5本連続ジャンプに挑む。今季グランプリ(GP)シリーズ初出場となる中国杯(北京)が今日5日から開幕。さらなるレベルアップのため、フリーでは規定の7本のジャンプのうち、後半2分間に5本を連続させる驚異のプログラムを作成した。まずは今日のショートプログラムで好発進し、明日6日のフリーへ弾みをつける。

 安藤が大きな挑戦を前に好調ぶりを示した。中国杯前日の最終調整。黒の練習着と白いスケート靴を合わせたシックな装いで氷上を舞う。そこで最も難しいルッツ-ループの2連続3回転ジャンプを鮮やかに決めた。安藤にとって今季GP初陣となる戦いに向けて、入念に確認を行った。

 今季、フリーで冒険に打って出る。「後半2分以降にジャンプを5つ入れた新しい挑戦を決めたい」。後半2分以降のジャンプは得点が1・1倍。規定の7本のうち、5本を入れれば得点を上積みできる。だが体力が消耗する後半に5本も跳ぶ女子選手はこれまでいなかった。多くても4本。浅田真央も金妍児も例外ではない。だが安藤は、5種類すべてのジャンプを後半に跳んで、その常識を打ち破るつもりだ。

 先月のジャパンオープンでも挑んだ。だがプログラムの流れが未完成で、5本中1本目となる2回転半-3回転トーループを1分55秒すぎに跳び、前半扱い。その後も転倒や、3連続ジャンプの最後を跳べない場面もあり、成功しなかった。「前回は作りたてだったので完全じゃなかったけど、今回はきちんと後半の2分に5本入れています。練習での成功の確率は上がってきている」と手応えは増している。

 勝負の五輪イヤーの昨季は表現力にこだわり、安全策も目立った。だが本来は女子で史上初めて4回転を成功させた名ジャンパー。「また4回転もやりたかったけど、今回はスケジュール的に時間が足りなかった。まず何ができるかとなった時に(後半5本のジャンプは)取り組みやすいと思った」。

 今回の挑戦に今後、連続3回転ジャンプなど組み合わせれば、五輪金メダル級の高得点も期待できる。安藤があふれる向上心を中国杯にぶつけ、さらなる高みを目指す。