<フィギュアスケート:グランプリシリーズ第4戦・NHK杯>◇11日◇札幌・真駒内セキスイハイムアリーナ

 ジャンプの真央から総合力の真央へ。女子ショートプログラム(SP)で今季初戦の浅田真央(21=中京大)が、名曲「シェヘラザード」の新プログラムを初披露し、冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)が1回転半になったが、その他の要素で高得点をマーク。58・42点で3位に踏みとどまり、フリーでの逆転圏内につけた。鈴木明子(26)が自己ベストの66・55点で首位。石川翔子(21)は最下位10位スタートとなった。

 3回転半ジャンプは失敗に終わった。しかし、演技後の浅田の表情は明るく、笑顔さえ漂った。「初めてのプログラム。まずまず、練習通りできた」。前日に「総合力で戦う」と話したとおり、残りの要素で3回転半の失敗を補った。これまで3回転半の出来にすべてが左右されていた浅田の姿はなかった。

 3回転半を跳ぶことには、昨季と同じようにこだわった。この日の朝、佐藤コーチに回避をアドバイスされた。しかし、「失敗しても他のところできちんとカバーする」と約束。3つのスピンは最高評価のレベル4がつき、3回転-2回転の連続ジャンプも出来栄えが良く加点がつくなど、その言葉を証明した。

 今季のSPの曲は、以前から切望していた「シェヘラザード」。08~09年シーズンから師事していたタラソワ・コーチのもとで、いつも聞いていた。「いつか滑りたいと思っていた。華やかでかわいらしい曲なので、それを表現したい」。

 それに伴い、衣装も斬新なデザインを取り入れた。有名なオーストリアの宝飾メーカー「スワロフスキー」の高級クリスタルを肩、背中、腕にちりばめ、初めてのパンツスタイル。これまで、スカートが多かった浅田にしては、大胆なイメージチェンジとなった。

 「シェヘラザード」は07年世界選手権で安藤美姫がSPで、09年同選手権では金妍児がフリーで使用し優勝した。浅田もその名曲で復活を期す。首位の鈴木とは8・13点差。小さな差ではないが、まだ逆転圏内だ。フリーの「愛の夢」は昨季からのプログラム。すでに何度も滑り込みをしてきた。「SPより安定している。今日以上の演技ができるように頑張ります」。浅田に昨季のような悲壮感はない。【吉松忠弘】