【モスクワ24日=今村健人】浅田真央(21=中京大)が最大の武器を“完全封印”する。フィギュアスケートのGPロシア杯は今日25日に開幕する。浅田は会場のメガスポルトで前日練習を行い、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)について「100%でなければ跳ばない」と宣言。この日は2度着氷したものの、シニアになって初めて1大会で1度も跳ばない可能性を示唆した。3季ぶりのGPファイナル(12月、カナダ)の切符を「武器」なしで手に入れる。

 誰に言われたわけでもない。佐藤信夫コーチとは、まだ話し合っていない。浅田が自分で考えて、出した答えだった。「トリプルアクセルは焦らずに、先生と相談して決めたい。でも、今の時点では100%で跳べるジャンプを入れたいと思っているので…。トリプルアクセルがなくてもできるんじゃないかなって、少しずつ感じてきています」。現時点で、事実上の3回転半封印宣言だった。

 35分間の公式練習では尻上がりに調子を上げた。中盤に1度、何とか着氷すると、2度目は鮮やかに舞い降りた。「中京大での練習よりも、NHK杯よりも回っていたのでびっくりした。ほぼクリーンで来ています」。リンクの上で笑顔も出た。今までなら間違いなく「挑戦」を貫く流れだった。それが変わった。

 「自分の中でも(3回転半のこだわりが)ちょっと変わってきてます。NHK杯でもアクセルなしにして得点もたくさん出ましたし。これでも十分、ほかの選手と戦えるんだなって」。

 第4戦NHK杯ではSPでトリプルアクセルを失敗して3位発進になった。だが、2回転半に落としたフリーではトップの得点をたたき出した。総合でも2位。トリプルアクセルなしでも順位が上がった。身をもって体感したことが、考え方も一回り、大人へと成長させた。

 今大会で2位以内に入れば自動的に、優勝した08年以来3季ぶりのファイナル進出が決まる。「もちろんファイナルに行きたいですし、見えてきていると思うんです。でも、まずは自分の演技をしっかりできるように心掛けたい」。

 シニアに転向した05-06年シーズンから幾度となく挑んできた大技。1大会のショートプログラムとフリーの両方で挑まなかったことは、1度もなかった。今大会。挑んだときは「100%」の自信が宿ったとき。だが挑まなくてもファイナルの切符をつかみ取る自信は、十分宿っている。