男子テニスでアジア人最高位の世界ランキング4位に輝いた錦織圭(36)が1日、今季限りでの現役引退を発表した。Xを更新し「『やり切った』と胸を張って言える自分がいます」と表明した。16年リオデジャネイロ五輪で日本勢96年ぶり表彰台となる銅メダルを獲得。跳び上がって打つ代名詞の「エア・ケイ」などを武器に、日本を世界水準へ押し上げたパイオニアだが、近年は故障が相次いだ中で大きな決断を下した。
日本テニス界で「100年に1人の選手」と言われた。新たな地平を切り開き、数々の金字塔を打ち立てた。錦織圭は「情熱がなくなって辞めることは多分ない」との言葉通り、力の限り戦い抜いた。
日本テニス協会の盛田正明元会長が私財を投じた「盛田ファンド」の支援を受け、13歳で本場米国に留学した。「テニスが一日中できる環境がうれしくて没頭した」。世界中の逸材が集う名門アカデミーでトッププロとも切磋琢磨し、めきめきと上達した。
柔らかい手首を生かしたフォアハンドに切れ味鋭いバックハンド、世界の強豪を翻弄したショットを生み出したのは繊細なタッチだった。
ラケットのガットのテンション(張る強さ)は通常1ポンド単位で調整するが、長年ガットの張り替えを担当した細谷理さんは「0・1ポンド単位で違いが分かる。そんな選手は他にいない」と明かす。
b網部分に塗るメーカーのロゴを、なるべく薄くするよう要望するほど妥協を許さなかった。
全盛期は「勝てない相手はいない」と言い切った。2014年全米オープン準決勝でノバク・ジョコビッチ(セルビア)、16年リオデジャネイロ五輪3位決定戦ではラファエル・ナダル(スペイン)に勝利した。ロジャー・フェデラー(スイス)アンディ・マリー(英国)を含めた「ビッグ4」と堂々と渡り合い、世界ランキング4位など日本選手に不可能とされた領域に、次々に到達した。後進に与えた影響は計り知れず「自分にとってのヒーロー」とは錦織と同じ10代で同アカデミーに渡った西岡良仁(ミキハウス)の言葉だ。
引き際については、30歳を目前に「世界30位ぐらいで辞めたい気持ちがある」と語っていた。しかし、現実は世界ランクが3桁に落ちても「楽しめているうちは、まだ大丈夫」と故障からの復活を諦めなかった。
最近はトップ選手に成長した24歳のヤニク・シナー(イタリア)のプレーを研究し「自分の理想のスタイル。イメトレ(イメージトレーニング)に役立つ」と向上心も失っていなかった。交流サイトには「今でもコートに立ち続けたい気持ちはある」と吐露した。「辞めるとしたら体がもう限界だなと感じたとき」との思いを貫き通したようだ。(共同)


