<スピードスケート:全日本スプリント選手権>◇初日◇27日◇北海道・明治北海道十勝オーバル

 朋美ママはやっぱりすごかった。女子で2年ぶりに出場した岡崎朋美(40=富士急)が、79・950点で総合8位につけた。今季、出産を経て競技に復帰。初の国内トップレベルの大会だったが、最初の500メートルで6位に入るなど存在感を見せた。大会は2日間で500メートル、1000メートルを2回ずつ滑り総合成績を争う。

 こわばっていた表情に、みるみる笑顔が広がった。岡崎は1種目目の女子500メートルで今季初めて40秒を切る39秒71でゴールを駆け抜けた。復帰後、初のトップレベルの大会で愛娘、杏珠(あんじゅ)ちゃんが見守る中、上々の滑り出し。続く1000メートルは12位に終わったものの「39秒5台くらいは出したかったけど、自分としてはまずまずかな。まだ、筋力不足だけど戻ってくればもう少しやれるかな」と満足げに話した。

 岡崎は出産を経て6月に練習を再開した。普通の選手よりも2カ月以上も始動が遅く、筋力トレーニングもほぼできない中での復帰。さらに、子育てとの両立は苦労の連続で授乳などでベスト体重から5キロも減った。この日の朝も、まだ寝ている愛娘を起こさないようにとトイレの中でパンにかじりついた。夫安武さんは「袋を破る音とかで起きないようにトイレでいつも食べてます」と話す。

 この日トップの小平からは1秒21遅れた。それでも、W杯代表の4位神谷、5位仁科との差は約0秒2しかない。この競技では誰も成し得ていない「ママで五輪」へ、1歩ずつ近づいている。「スケート界では私が第1歩。道を開いていきたい」と気持ちは強い。

 今大会の種目別で上位5人に入れば、W杯後半戦の代表入りが見えてくる。ただ岡崎は今季を14年ソチ五輪への土台作りのシーズンと考え、世界を転戦するつもりはない。「最終日は気持ちだけは負けないようにいきたい」。朋美ママはまだまだ強くなる。【松末守司】