悲願のメダル獲得へ、強国ロシアからロンドンに乗り込む。ロンドン五輪出場が決まっている新体操のフェアリージャパンPOLA(日本団体代表)が、五輪開幕前まで強豪国ロシア・モスクワで「練習漬け」の長期合宿生活に入る。23日、都内で試技会を行い、五輪本番用の演技を披露した。28日には2年前から拠点にしているロシアに戻り、五輪まで帰国するのは結団式などの1、2度だけという。平均年齢18歳の美少女7人が、新体操大国からメダルに挑む。

 フープが跳ね、リボンが舞う。ボールが飛び交う。マットの上では、5人の選手が目まぐるしく入り乱れた。ボール、リボン・フープの2種目ともに2回演技し、1度ずつ小さなミスは出た。しかし、山崎浩子強化本部長は「この時期としては合格点」と、本場ロシア仕込みの演技に手応えを感じた。

 09年末に現在の代表候補7人が選抜され、ロシア・サンクトペテルブルクに拠点を移した。「北京五輪で10位。何が足りないかを考えた。答えは表現力や芸術の部分。そこで本場に行くことを決めた」(山崎強化本部長)。強化費約3000万円を計上。世界最強のロシアを育てたビストロバ・コーチの指導の下、年間200日ほど、徹底した新体操漬けの生活を送っている。

 昨年11月からはモスクワに拠点を移し、1日、10時間以上の練習をこなしている。同秋から日本と行き来しているが、今月28日から再びモスクワに戻ると、五輪開幕前まで長期合宿に入る。新体操専用のナショナルセンターに宿泊。主将の田中琴乃(20)は「泊まるところも練習も同じ場所。休みは日曜の1日だけ」。7人が3部屋に分かれ、遠征から帰ってくる度にじゃんけんで部屋割りを決める。

 17歳のチーム最年少、畠山愛理の左の肩甲骨の付近には血がにじむ。リボン・フープの演技で、フープを背中ではね返す高難度の技があり「筋肉の上ならまだしも、骨の上だとすごく痛い」。1日に何度もフープが背中に落ちる。「でも、挑戦できるのは成長している証し」。内出血は畠山にとっての勲章だ。

 昨年9月の世界選手権で5位に入賞し、ロンドン五輪への出場権を獲得した。これまでロシア、ブルガリア、イタリア、ベラルーシが確固たる4強を築いてきた。しかし、この1年、4強が崩れることが増えた。「(メダルへの)チャンスはある」(山崎強化本部長)。ロンドンでのメダルへ、ロシアからの道は続いている。【吉松忠弘】

 ◆フェアリージャパンPOLA

 04年アテネ五輪の出場権を逃し、強化を根本から変更。05年に全国オーディションを行い、共同生活を送ることを条件に、ナショナル選抜団体メンバー9人が選ばれた。エアコンのない千葉大宮高の体育館を拠点にスタート。選手は自炊、洗濯などをこなしながら五輪を目指した。07年にPOLAが公式スポンサーとして美容を担当。愛称も募集して「フェアリージャパンPOLA」となった。現在の代表は8期生。