<ホッケー:ロンドン五輪世界最終予選・日本7-0オーストリア>◇初日◇25日◇1次リーグ◇岐阜県グリーンスタジアム

 「さくらジャパン」が7発快勝発進した。世界ランク9位の日本は前半6分、MF山本由佳理主将(30=ソニーHC)がこぼれ球を押し込んで先制。持ち前の速さを生かした攻めで、同29位オーストリアを圧倒した。年齢差21歳のチームをまとめる「鬼キャプテン」が、7人が得点する圧勝劇を演出。地元開催で狙うアテネ、北京に続く3大会連続五輪出場へ、まずは好スタートを切った。

 点火したのはキャプテンユカリだった。重くてチグハグな格下相手に、日本が速さで圧倒した。開始6分、沈黙ムードをつくらないうちに「いい時間帯に決められた」と山本が先制。FW大塚のシュートのこぼれ球を冷静に押し込んだ。空いたスペースには必ず顔を出す。豊富な運動量で献身的に動き、大量7発のゴールラッシュを生んだ。

 グラウンドでは「鬼」になる。アテネ、北京五輪での経験を買われ、10年広州アジア大会後から主将を任された。「悪いと思ったら言う性格。年齢差があるので、上と下とのつなぎ役として盛り上げるようにしています」。平均26・7歳の18人は、最年長41歳のDF加藤から20歳のMF田中まで21歳差。若手が萎縮しないよう心を砕き、年上でも遠慮なく責める。

 本来はいじられ役だ。「オンとオフを使い分けている」と、いつもニコニコする。4年前、北京で10位に終わり「燃え尽き症候群になった」。1度は代表を引退したが、所属先で後輩を指導するうちに“大人”になった。「前は自分ができることを年下ができないと、イラッとしていた。今は心に余裕ができました」。周囲の説得もあって1年後に代表復帰。北京五輪で主将だった加藤は「私もズバズバ言われますけど嫌みがない。すごくいい主将ですよ」と求心力は絶大だ。

 プレーは今季限りだと決めている。「最後、という言葉が気持ちを強くさせる」。常に全力プレー、手を抜くことはない。期待の若手FWトリオ、23歳柴田と22歳の大塚、三橋も得点。勢いづく7発発進となった。山本は「ランク最上位のプライドがある。無失点で大会を終わりたい」と全試合完封を狙う。満開になるのは真夏のロンドン。頼れるキャプテン率いる「さくら」は、つぼみのままでも十分強いのだ。【近間康隆】

 ▼ホッケーのロンドン五輪への道

 男女とも五輪は12カ国で実施。既に各大陸王者や日本開催以外の最終予選の勝者11カ国が出場を決めている。日本が五輪に出るためには今回の最終予選で優勝するしかない。最終予選は6カ国総当たりで1次リーグを行い、上位2カ国が決勝で対戦する