<柔道:全日本実業個人選手権>◇8月31日◇兵庫県尼崎市・ベイコム総合体育館

 五輪3連覇の実績を持つ野村忠宏(38=ミキハウス)が、首の皮一枚で引退を回避した。右肩の痛みをこらえて男子60キロ級に強行出場。準決勝で強化選手の石川裕紀(25)に一本負けしたが、ベスト4入りで11月講道館杯(千葉)の出場権を獲得。「なかなかスッパリやめられへん」と、現役続行へ色気を見せた。

 右肩はテーピングでグルグル巻きだった。8月14日の練習中に脱臼し、周囲の筋肉も損傷。満足な練習はできなかったが、執念で最低限の目標は達成した。「講道館杯に出られなかったら、この場が引退会見になってたかも。だから、準々決勝は意地で戦った」。体はボロボロだが、気力はある。リオデジャネイロ世界選手権の同級で高藤直寿(20)が金メダルを奪ったことにも「若くて元気ある選手と組み合いたい」と刺激を受けた。「柔道を盛り上げたい。柔道バカですから」。右肩の治療が優先課題になるが、野村はまだやめそうにない。【木村有三】