アルバイトから社員へ-。女子アイスホッケー日本代表からアルバイトで生計を立てる選手がゼロになった。都内のダイドードリンコアイスアリーナで受付などのアルバイトをするFW久保英恵(30)の就職先が内定。近日中に発表される見込みとなり、これで学生以外の全選手の就職先が確保された。代表は19日、米国遠征に出発した。

 「五輪に出れば環境が変わる」。選手たちの合言葉が現実になった。日本オリンピック委員会(JOC)の仲介があったとはいえ、五輪出場で知名度を上げた効果は絶大だった。ピザハットで6年半、時給810円でアルバイトしていたFW坂上智子(29)は今月1日から自動車用クラッチ板製造ダイナックス(北海道苫小牧市)に正社員として入社。「今まで以上に頑張れます」と感謝するように言った。串焼き店でアルバイトしていたFW中村亜実(25)も17日にバンダイ入社が決定した。

 どの会社もアイスホッケーの活動には理解を示す。遠征なども休暇として認められる。そんな待遇の改善は即、競技環境の向上につながる。正社員になった坂上は早速、6万円の新スケート靴を購入。「より軽い新モデル。今まで以上に足を動かせる。ソチへの武器になります」と笑みを浮かべた。アルバイト時代は、防具が壊れても、補修しながら我慢して使用を続けただけに、状況は一変した。

 もっとも選手たちは正社員の座に安住するつもりはない。「競技をもっとメジャーにして、将来はアイスホッケーが仕事になれば。理想はプロ。そのためにもソチでメダルを取らないと」と坂上。日本代表はこの日から米国に向かい、現地の大学生と5試合戦う。もう生活の心配はいらない。ソチまではアイスホッケーに集中する。【田口潤】