<大相撲秋場所>◇5日目◇18日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(27=高砂)が、武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)が指示した両手をついた立ち合いの徹底化に「物言い」を付けた。平幕旭天鵬を下して1敗を守った後、互いに息が合った立ち合いなら、止める必要はないとの考えを明かした。横綱白鵬(23)もこの日、立ち合いの手つきに過敏になるなどで平幕稀勢の里に屈し、先場所からの連勝が19で止まった。審判部や行司は止める基準がはっきりせず、混乱した状態だ。幕内の全勝は平幕豪栄道(22)1人になった。

 相撲を淡々と振り返っていた朝青龍の声が急に大きくなった。「お互いに息が合っている立ち合いは(手つき不十分でも)やらせた方がいい。(やり直しは)集中力がなくなるんだ。秋場所が終わったら力士会で説明してもらわないと。急に言われても直らないよ」。武蔵川新理事長が初日前日の13日に指示した「両手をつく立ち合いの徹底」に力士では初めて、真っ向から物言いを付けた。

 行司や審判によって、止める基準が違っている。自身も前日の稀勢の里戦でフライング気味の立ち合いをしたが、そのまま取組が成立した。力士会会長として「(基準が)分からない。直接説明してほしい。相撲は一発勝負なのだから」と率直な意見を口にした。

 結びでは白鵬が、目の前で負けた。「立ち合いを意識しすぎた」(白鵬)と、やはり手つき徹底の影響が出た形だ。朝青龍は「立ち合いで迷ったんじゃないか」とライバルの心境を推し量った。急な変革が相撲の面白さをそいでいるのではないかと考えている。

 武蔵川理事長は、13日に審判部の親方に手つきの徹底を指示した。力士への正式な説明はなかった。連絡ミスで、支度部屋に「立ち合いに必ず手をついて立つこと」という張り紙が掲示されたのも、2日目の15日だった。ルールとして明文化されているが、厳格化の説明は不足していた。

 同時に、今回の「物言い」は朝青龍が自信を取り戻しつつある証拠だ。3日目の雅山戦での黒星に、一時は引退を示唆するほどのショックを受けた。ところがその後の連勝で元気を取り戻した。理事長交代後の朝青龍は言動が慎重で、ギラギラした闘争心が消えていた。新理事長方針への初の「反抗」は、闘争心の復活ともいえそうだ。【来田岳彦】