<大相撲夏場所>◇千秋楽◇24日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(28)が日馬富士の悲願達成に涙ぐんだ。支度部屋のテレビで優勝を見届けると、右手で右ひざをたたいて「よっしゃ」と言い、小さくうなずいた。日馬富士の兄と親友で子供のころから弟のようにかわいがっていた。着物をはおると目を赤くし、また取組のVTRを見つめた。

 日馬富士が琴欧洲を倒した時点で、自身の優勝は消滅したが、自分が白鵬を倒せば決定戦を待たずに、日馬富士を優勝させることができる。しかし、結びの一番であっさり寄り切られた。前日の日馬富士戦で右腰を強打。テーピングをし、痛み止めを飲んで土俵に立ったが、体が思うように動かなかった。西支度部屋に戻ると、決定戦前の日馬富士に「勝てなくてごめんな」と声をかけた。

 それでも「弟」は賜杯をつかんだ。横綱も報道陣に7日目以来、8日ぶりに前を向いて答えた。「もう1人、ライバルができたな」。来場所に向けては「まずは体の充実。治療に専念したい」。早期のモンゴル帰国は明言しなかったが、関係者によると、再起を目指して日本、モンゴルの双方で慢性化した左ひじ痛と腰の治療を受ける意向という。【柳田通斉】