<大相撲秋場所>◇14日目◇26日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(24=宮城野)5場所連続14勝以上、今年初めての東京場所での優勝に向けて本割、優勝決定戦の2連勝で最強の座を守るつもりだ。

 「敵」は土俵下にいた。白鵬は、対する琴欧洲の向こうから朝青龍の視線を感じた。負ければ、結びで優勝決定の可能性が高まる。そうなれば、千秋楽決戦は「消化試合」になる。「東の横綱として最後まで責任を果たすことが大事ですから」。琴欧洲を投げ捨てて1敗をキープ。先輩横綱の千秋楽前Vを阻み、まずは最低限の使命を果たした。

 203センチの長身大関に、気持ちは挑戦者だった。立ち合いではリーチの長い相手に、右四つ左上手の十分な体勢を許した。「一生懸命取りました。止まってたらね。ひと呼吸置けば十分です」。まずは、ねじ込んだ右ですくい投げ。無理して仕留めず、続けて左の小手投げに出た。ひじ痛で決して万全でない左腕で豪快に転がし「鮮やかに決まりましたね」と満足した。

 千秋楽は「三度目の正直」に挑む。今年初場所は朝青龍、夏場所は日馬富士に優勝決定戦で敗れた。場所前の8日。部屋を訪れた後援会幹部に「今年はまだ東京場所で優勝していない。今の横綱なら、年4場所は優勝しなきゃ」と指摘された。この日の取組後に「東京場所での優勝」への思いを聞かれると「そういう気持ちで場所前からいた」。本割を制して今年3度目の決定戦へ。同じく3度目となった東京場所Vの好機をものにしたい。

 この日で09年70勝となった。秋場所14日目での到達は、年間最多84勝の05年朝青龍を上回る史上最速ペース。初場所からの「連続14勝以上場所」では、歴代単独トップの「5」へ王手をかけた。「あと1日ですから、気持ちが空回りしないようにしたい」。記録とプライドをかけて、白鵬は逆転優勝を狙う。【近間康隆】