<大相撲九州場所>◇千秋楽◇29日◇福岡国際センター

 横綱白鵬(24=宮城野)が4度目の15戦全勝で、通算12度目の優勝に花を添えた。横綱朝青龍(29)に上体を起こされ苦しんだが、最後は豪快な左上手投げで先輩横綱を裏返した。朝青龍にはこの1年間、横綱同士の対戦では史上初となる6戦全勝。通算成績も12勝12敗と五分にし、完全な時代交代を印象づけた。年間最多勝記録も「86」に伸ばし、2月には東京と徳島での「ダブル挙式」も決定。公私に充実した強き横綱は、記録に残る09年を完ぺきに締めた。

 白鵬に、ようやく笑顔が広がった。今年春場所に続く4度目の全勝V。年間勝利は86に伸ばした。「すべてが終わって、ホント、ホッとしました」。賜杯奪回と年間最多勝記録の更新。最高の結果で重圧を乗り越え、安堵(あんど)感に包まれた。「今日、危険だな。救急車になっちゃったりして」。浴びるほど美酒を飲む権利は、十分だった。

 完ぺきに締めた。カゼだ、右肩痛だ、と手負いの先輩横綱にも意地があった。下から攻められ、左上手を取らせてくれない。それでも右下手を命綱に、攻めさせながら勝機をうかがった。左上手をつかみ、寄り立てる。最後は豪快に裏返した。横綱同士の対戦では史上初の、朝青龍戦年間6戦全勝。通算成績も12勝12敗とし、世代交代を印象づけたが「たまたまじゃないですか」と控えめだった。

 思いは実った。秋場所後。自宅では、朝青龍にすくい投げで敗れた優勝決定戦のVTRを繰り返し見ていた。紗代子夫人(25)は「かなり悔しかったようで、今年最後は決めたいと、話してました」と明かす。惨めな姿をまぶたの裏に焼き付け、闘志を燃やした。

 来年初場所後の2月。07年2月に結婚した夫人との「ダブル挙式」が決まった。まずは21日に東京都内で1000人規模の披露宴を開催。27日には夫人の故郷で「第二のふるさと」という徳島で、約400人を集めた披露宴を行う。

 徳島では、年間最多勝新記録の偉業を祝ったパレードも予定。徳島後援会は特産の「あい染め」での化粧まわしを製作し、デザイン候補には「渦潮」などが挙がる。

 歴史を塗り替えた09年を白鵬は「最高の年じゃないですか」と振り返った。表彰式を終えると、支度部屋入り口で長女愛美羽ちゃん(2)が「パパ~」と待ちかまえていた。「次の目標は(優勝14回の)輪島関。(優勝22回の)貴乃花関にも並びたいですね」。頼もしいパパの目は、また新たな目標に向かっていた。【近間康隆】