<大相撲初場所>◇11日目◇19日◇東京・両国国技館

 関脇稀勢の里(24=鳴戸)が、再び「白鵬キラー」ぶりを発揮した。立ち合いから横綱白鵬(25=宮城野)の右差しを封じ、突き放して最後は押し出し、2場所連続で撃破した。

 両国国技館に1年ぶりに舞った座布団を、白鵬はうつろな目で見つめた。土俵上にはまた、稀勢の里がいた。押し出された土俵に再び上がると、首をひねった。08年九州場所、09年初場所の日馬富士以来、2年ぶりに同じ相手への連敗を喫した。稀勢の里には対戦成績こそ20勝6敗だが、大関時代の3連敗に次ぐ連敗。苦手意識について「あるんでしょうね。いまひとつ体が動かなかった。負けて相撲を覚えるといいますから」とうつろな目で認めた。

 立ち合いは「どっちでもいい」と、突き放すか組むか迷った。考えがまとまらないまま右でかち上げたがいなされ、横から攻められ後手を踏んだ。顔面を突かれて引くと、一気に押し出される完敗。先場所止まった63連勝にはほど遠い、23連勝には「何となく物足りないというのはある」と、つぶやいた。

 9日目にこじらせた風邪の影響は「それはない」と言い訳しなかった。九州場所で敗れた取組の映像は、3日後に見た。その後も繰り返し見ては、相手の張り手にカッとなった自分を、笑って振り返るなど立ち直ったはずだった。

 昨年12月の横綱審議委員会稽古総見では、稀勢の里を指名した。連勝で雪辱したが、かねて「土俵のしぐさとか、どこか気に入らないんだろうね」と、2番で計3発の張り手を顔面に浴びせ、ぶつかり稽古で“かわいがる”など、冷静さを欠いていた。約8年前から宮城野部屋でメンタル強化に尽力する、内藤堅志トレーナーの「稽古は練習ではなくリハーサル」という教えとは、かけ離れていた。この日も相手の突き放しにムキになって応じ、脇が甘くなる悪癖をのぞかせた。

 稀勢の里には2場所連続で敗れ、その前の2場所も苦戦した。それだけに「先場所も今場所も(私に)勝っているのだから、このままいってほしい」。悔しさを押し殺してエールを送るチグハグな言動が、動揺を表していた。【高田文太】