鶴竜の綱は朝青龍を教材にする。大相撲春場所で初優勝を飾った大関鶴竜(28=井筒)は今日26日、夏場所(5月11日初日、東京・両国国技館)番付編成会議と臨時理事会を経て正式に第71代横綱に昇進する。25日は大阪市西成区の部屋宿舎に、一門の若い衆30人余りが集結。新しい綱をつくるために「麻もみ」を行った。雲竜型の綱打ちは、元横綱朝青龍が締めた際に撮影したビデオを参考に行うことになった。

 4年ぶりに誕生する雲竜型の横綱、鶴竜。その“教材”が、最後の雲竜型だった3代前の朝青龍になる。日本相撲協会には、朝青龍が綱を締める際に撮影したビデオが存在する。関係者によると、27日に行われる綱打ちではそのビデオを参考にするという。

 横綱の土俵入りには雲竜型と、白鵬、日馬富士が行う不知火型がある。鶴竜は「大横綱に教えてもらえてうれしい」という貴乃花親方(元横綱)に土俵入りの指導を仰ぐが、2つの型の違いは土俵入りの形だけではない。綱の結び目が不知火の両輪に対して、雲竜は一輪。締め方も異なる。現在、雲竜の綱の締め方を知る若い衆は少なく、朝青龍が巡業で締める際に運良く撮影していたビデオが持ち出されることになった。

 綱は朝青龍式…とはいえ、礼儀正しいその“品格”は、第68代横綱とはむしろ対極。24日の横綱審議委員会では「内面」も高く評価された。「親方から、外国人という目で見られるからこそ、言葉も一生懸命勉強した方がいいと、ずっと言われてきた。親方の教えのおかげです」と感謝した。

 前夜は、来日した両親と3人で久しぶりに一部屋に泊まり、疲れを癒やした。この日は約20キロの麻と約100キロの米ぬかを用いて綱をつくるための「麻もみ」が行われ、初めて目の当たりにした。当面、借り受ける北の湖理事長(元横綱)の三つぞろいの化粧まわしも届いた。伝達式での口上の言葉も決まった。「かまないように、シンプルに行きます」。笑顔の中で、準備はいよいよ整った。【今村健人】