阪神の投手力を考えたときに、序盤に得点を重ねられると、勝機が上がる。1点リードの3回無死一塁で見せた中野の好走塁が大きなポイントとなった。

この場面、バスターエンドランで熊谷が左前に運び、中野は一気に三塁に進んだ。スタートを切っていたとはいえ、俊足の中野でもギリギリのプレーだった。左翼で出続けている選手ならチャージをかけて、アウトを狙ったかもしれないが、先発機会の少ない長野で、そこまで無理をしなかった。中野も二塁ベースを回って、外野の守備もよく見えたのだろう。アウトになれば暴走と言われるかもしれないが、好判断の走塁と評価できる。一、三塁の形がつくれたことで、近本の投ゴロで1点を奪えた。

チーム状態が上向きとなった6月から、中野、近本に、島田や熊谷と上位に足の速い選手を置いた。微妙なタイミングでも次の塁を狙える機動力は、相手投手にとって脅威になる。派手な攻撃ではないが、脇役が活躍しての得点は、チームの地力を感じさせる。

そして序盤のリードを守り切れるところが、今の強みだ。7回の救援投手の人選に注目していたが、浜地を起用。アルカンタラは球のキレが落ちているという判断だろう。浜地は直球の球威に加え、カーブ、スライダー、フォークと変化球もいい。制球力もあり、勝ちパターンでも十分に投げられる。コンディションに応じた投手起用が光った。

球宴まで残り4試合で、借金は2となった。これだけ借金を減らしたということは、どのチームよりも状態はいい、という感触はあるはずだ。勝率5割が目前に迫り、精神的にも楽になる。未勝利だったマツダスタジアムで、大きな1勝を手にしたといえる。(日刊スポーツ評論家)

広島対阪神 マツダスタジアムで初勝利し、タッチを交わす岩崎(左から3人目)と梅野(同5人目)ら阪神ナイン(撮影・加藤哉)
広島対阪神 マツダスタジアムで初勝利し、タッチを交わす岩崎(左から3人目)と梅野(同5人目)ら阪神ナイン(撮影・加藤哉)