日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)が1日、阪神の沖縄・宜野座1軍キャンプ初日を視察し、岡田阪神の守備改革に注目した。チームは昨季まで5年連続で両リーグワースト失策を記録しているが、虎のレジェンドOBはシートノックで外野手返球の変化に着目。送球ミス減少からの“守乱”改善に期待を寄せた。【聞き手=佐井陽介】


キャンプ初日のシートノックを見て、岡田監督がどれほど守備に重点を置いているのか理解できました。注目したポイントは外野手の返球です。自分が見た限り、この日は二塁返球、三塁返球、本塁返球ともに誰一人ノーカット返球する外野手がいませんでした。左翼のノイジー選手、右翼のミエセス選手も含めて、全員がきっちりカットマンに送球をつないでいました。これは非常に珍しい事象と言えます。

沖縄まで見学に来られたことがある方はご存じかもしれませんが、キャンプのシートノックでは外野手が本塁にノーカット、ノーバウンド送球を決めて、観客が「おぉ~」と拍手を浴びせるシーンが決して少なくありません。そんな歓声が今年の初日はゼロ。一方で、送球のミスは昨年までと比べて極端に減っていると感じました。捕ってから素早くカットマンに送球する。そして、小幡選手のような内野手の強肩を生かす。岡田監督の就任以降、守備や送球の大切さを秋季キャンプから徹底してきたのでしょう。意識改革が順調に進んでいると強く感じました。

ノーカット送球にはリスクがあります。大きく方向がズレたりバウンドが中途半端になれば、捕球を試みた選手が後ろにそらす確率が高くなります。少しでもボールが浮けば、打者走者も含めた後ろの走者に次の塁を奪われる可能性も高くなります。一方でカットマンを経由した場合、たとえば遊撃手や二塁手の本塁返球にミスが生まれる可能性は、外野手のそれと比べれば大きく減少します。カットマンを通せば、無駄な進塁を許さずにも済みます。

基本的には素早くカットマンにつないで、内野手が送球した方がスピードと正確さを両立できるもの。そんな考え方がしっかりチームに浸透しているのだと想像します。

いろんな場所で話をさせてもらってきて、岡田監督は「投げる」という作業を本当に大切にされているように感じています。その上で「なんとなく送球を良くする」「エラーを少なくする」ではなく「送球を良くする、エラーを少なくするためには何をすべきか」を選手に徹底させている印象です。もちろん試合では距離によってノーカットを選択するパターンも有りだとは思いますが、来日したばかりの外国人選手にも早くも方針が行き届いているところに、今年の阪神の守備に対する意識の高さが見え隠れします。

送球のミスは一番痛く、同時に防げるミスでもあります。昨季まで5年連続で両リーグワースト失策を記録している阪神ですが、キャンプ初日から守備力改善の兆しを感じ取れた気がしています。(日刊スポーツ評論家)

小幡(中央)に守備のアドバイスを行う日刊スポーツ評論家の鳥谷氏、左は平田ヘッドコーチ(撮影・加藤哉)
小幡(中央)に守備のアドバイスを行う日刊スポーツ評論家の鳥谷氏、左は平田ヘッドコーチ(撮影・加藤哉)