開幕投手を務めたエンゼルス大谷翔平投手(28)が、「3番DH兼投手」で出場し、投手では6回2安打無失点、10奪三振の力投を見せた。打者では4回の第2打席で右前打を放ち、3打数1安打だった。

チームは救援陣が踏ん張れず、逆転負けを喫した。

アスレチックス戦の4回、ピンチを連続三振で切り抜け、ガッツポーズの大谷翔平(共同)
アスレチックス戦の4回、ピンチを連続三振で切り抜け、ガッツポーズの大谷翔平(共同)

大谷が珍しく、肩で息をしていた。最後のイニングとなった6回の投球。シーズン初戦にしては多い93球で降板したが、スタミナのある大谷にしては、あまり見たことがない光景だった。今季からメジャーでは走者なしで15秒、走者ありで20秒以内に投げないといけない「ピッチクロック」が導入されたが、影響があったと感じた。

投手経験者からすると、15秒は相当に短い。これまでは投球間隔を調整することで息を整えられたが、そうもいかなくなる。投打二刀流は、打って、全力疾走してからマウンドに行くこともある。メジャーはイニング間の時間も2分5秒と決まっている。力を入れる時は息を止める。春先は涼しいからまだいいが、夏場のデーゲームはきついだろう。米国は暑さが半端ではない球場がある。今年は開幕前にWBCもあり、疲労がたまるのも例年より早くなる。

アスレチックス対エンゼルス 5回終了時、球審とピッチクロックの確認をするエンゼルス大谷(撮影・菅敏)
アスレチックス対エンゼルス 5回終了時、球審とピッチクロックの確認をするエンゼルス大谷(撮影・菅敏)

投球自体は心配なかった。横に曲がるスライダーの「スイーパー」が48%と多く、4回はさすがに狙われて初安打を許した。続く打者にはフォークが浮いて連打を浴びたが、しっかり勝負どころでスイッチを入れた。1死二、三塁から2者連続三振でピンチを脱したのは、真っすぐの威力がぐっと増したからだ。ピッチングにメリハリをつけられるのは、勝てる投手の条件だ。

初回は15球中9球がボール球だった。今年は既にWBCで緊張する場面を経験していることもあり、開幕戦という気負いは感じなかった。制球が乱れたのは、気温が11度と低かったからだろう。体がほぐれる2回以降は、普段通りの投球に戻っていた。18個のアウトの内、三振が10、フライアウトが7、ゴロアウトは1つだけだった。スイーパーに切れがあり、打者には当てるだけの打撃をさせていた。球自体はまったく問題ないだけに、今季はピッチクロックに対応した体調管理が鍵になるだろう。(日刊スポーツ評論家)

アスレチックス対エンゼルス 6回、声を出せいながら力投する大谷(撮影・菅敏)
アスレチックス対エンゼルス 6回、声を出せいながら力投する大谷(撮影・菅敏)