村上が素晴らしいピッチングで阪神が快勝したと、見えるかもしれないが、私の目には初回の両チームの攻防に、この試合に限り、一瞬の判断の差がうかがえた。
中日は初回1死二塁。上林誠知外野手(29)が一、二塁間を破るヒット。岡林勇希外野手(23)はホームを狙うが、完璧にアウトのタイミングだった。岡林は三塁を回ったところでつまずいている。回したサードコーチの判断は当然だが、つまずいた岡林自身が、ここは自分で判断すべきだ。
まだ1死だったこと、そして主軸に回ること、そしてつまずいている岡林自身が、アウトのタイミングだと自己判断しなければならない。かつ、ここで上林が一塁でストップしている。上林は岡林の走塁、森下の返球が視野に入っているはずだ。ならば、一塁大山がカットする可能性を念頭に、二塁を狙わないと。
それがおとりの動きになり、岡林の走塁をアシストできれば最善の判断となり、たとえ岡林がアウトになっても二塁に進んでいればまだチャンスは残った。森下の返球が良かった、という表面的なことではない。
阪神はその裏、1死二塁から森下の中前に落ちるヒットで中野拓夢内野手(28)が生還する。ここでもセンター岡林は森下が打った瞬間に1、2歩下がってから前進した。中野はその動きを視野に入れ、楽々ホームにかえっている。
岡林ばかりを責める意図はないが、ここでも打った瞬間に思わず下がってしまったことで、中野に走塁でのアドバンテージを与えてしまった。逆に、1歩目を前に踏み出す判断ができれば、あそこまで余裕をもって三塁を回ることはできなかったのではないか。少なくとも、私の目にはそう映った。
極め付きは6回2死三塁から佐藤輝のダメ押しタイムリーの場面だ。2ボールとなったところで、中日バッテリーは四球やむなしの部分はあったと想像する。それが3球目にボール球のカットボールで空振りを奪い、フルカウントに持ち込んだことで、欲が出てしまったのではないか。
最後、外角真っすぐはストライクゾーン。佐藤輝はバットを当てるような軽打で左中間を破った。フルカウントからも、2ボール時の四球やむなしの気持ちを失わず、もう少し広いゾーンで、との考えがあれば、あの2点目はどうなったか。粘れる可能性は残したと感じた。
私は捕手だったため、走塁までの前段階としての野手、あるいは走者の細かい動きを、同時進行で見る習性がある。その感覚から言わせてもらうと、この試合では両チームの一瞬の判断の良しあしに明暗を感じ取った。(日刊スポーツ評論家)




