<中日0-4阪神>◇29日◇ナゴヤドーム

中日浅尾は最後の登板を終えると、マウンド上で野手1人1人に丁寧に頭を下げていた。時代を築いたセットアッパーは、最後まで謙虚で好感の持てる人柄だった。担当の中原勇一スカウトが大学時代の忘れられない光景を明かした。

初めて浅尾を見たのは、日本福祉大2年の時だ。投球よりも、フィールディングのうまさが印象に残った。「とにかくすごかった。ボークを取られるんじゃないか、というぐらい、けん制もうまかった」。ただユニホームの着こなしが気になった。いわゆる「腰パン」に、帽子のツバは上を向いていた。ピアスをつけるため、耳には穴を開けていた。強豪校でもまれていない、無名の存在だ。「服装が汚かった」。そんなマイナスのイメージもあった。

浅尾が大学4年の時、中原スカウトは誰にも告げず、こっそりと練習場に足を運んだ。誰もいないグラウンドにたった1人、浅尾がグラウンドを整備していた。最後はきれいにラインを引いていた。下級生に聞けば、こんな答えが返ってきた。「いつも浅尾さんがやってくれているんです」。見た目は悪いが、能力、性格の良さは抜群だった。浅尾は浅尾のままで現役生活を終えた。【元中日担当=桝井聡】