ヤクルトで2度のセーブ王に輝き、米復帰後はレンジャーズなどでプレーしたトニー・バーネット投手(36)が28日、インスタグラムで現役引退を表明した。担当記者が人柄をつづる。

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長く伸びた髪、もみあげまで蓄えたひげ、鋭い眼光。ヤクルトに在籍当時のバーネットは、映画「ラストサムライ」で主演を務めたトム・クルーズのようだった。移動時のスーツの際は髪を束ね、ハリウッドスターのようなたたずまい。一見近寄りがたいオーラを持ちながら、ナイスガイだった。

球団では外国人選手のタクシー通勤が許可されていたが、マウンテンバイクで神宮クラブハウスへ通勤。「東京の景色、空気に触ることが好きなんだ」とぶっきらぼうに言ってみせた。

15年にセーブ王に輝き、チームの14年ぶりの優勝に貢献した。同年オフ、レンジャーズと念願のメジャー契約を勝ち取った。

華やかに見えるキャリアも、14年に負った左膝後十字靱帯(じんたい)部分断裂のリハビリがあったからこそ、だと思う。通訳の小山さんは当時を懐かしむ。「全治数カ月で、心が折れそうだったと思います。でも彼は『俺は絶対にこの時間を無駄にしたくない。待っているファンのため、そしてチームメートのために絶対に強くなって戻ってみせる』と毎日のように僕に言っていましたね」。10年に来日。武士のように、多くを語らず、黙々と投げ込み、夢を勝ち取った。

バーネットはサムライだった。【元ヤクルト担当=栗田尚樹】